研究課題
①狭塩性淡水魚パンガシウスの高塩分耐性パンガシウスの高塩分耐性を調べるために、全長6 cm程度のパンガシウスを 0 ppt、5 ppt、10 ppt、12.5 ppt、15 pptに調整した5つの水槽に19尾ずつ分け、3日間飼育した。この際、魚が1分間以上平衡を保てなかった場合を死亡と判定した。15 pptの群は19尾中17尾が死亡したが、その他の群ではすべての個体が生存した。飼育終了時点での各個体の血液浸透圧を測定したところ0 pptから10 pptまでは血液浸透圧に変化はなかった(血液浸透圧273±4 mOsm/kg)。一方で、12.5 pptで飼育した群の血液浸透圧はわずかに上昇したが、生理学的許容範囲内に維持された(血液浸透圧315.3 mOsm/kg)。これらのことから、パンガシウスの生息できる塩分濃度の上限は12.5 pptから15 pptの間にあると考えられた。②塩類細胞の形態観察モザンビークティラピアなどを用いた研究で、塩類細胞は環境水の塩分濃度によって形態と機能を変えることが知られている。パンガシウス各20 尾を塩分濃度と水温を組み合わせた4群(0 ppt/27℃(対照区)、0 ppt/33℃、10 ppt/27℃、10 ppt/33℃)に分け7日間飼育し、鰓を塩類細胞のマーカーとして知られるNa/K-ATPase(NKA)抗体で免疫染色し、塩類細胞の数と大きさを各群で比較した。その結果、パンガシウスの塩類細胞は環境水の塩分濃度が上昇すると、数が減少し大きさは小型化することが分かった。これらのことは、環境水の塩分濃度が上昇し、環境水から積極的に塩類を取り込む必要性が低下したためと考えられた。一方で、上記の塩類細胞の変化に水温の影響は見られなかった。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初の研究計画を一部変更せざる得なかった。計画では初年次に当たる令和2年度にベトナムのカントー大学水産学部で飼育実験を実施する予定であったが、外国出張中止のため実施することができなかった。そのため、計画を一部変更し、国内で入手したパンガシウスを使って飼育実験をおこなった。
新型コロナウイルス感染症が収束した場合には、ベトナムに出張して当初予定の実験を実施したい。しかし、状況が改善せずベトナム訪問が困難だと判断した場合には、引き続き国内での実験で対応するつもりである。
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10.1016/j.gene.2020.145285
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