研究課題
トラフグ稚魚はテトロドトキシン(TTX)に誘引されることが報告されており、トラフグ親魚がTTXに誘引されるかを解明するため、以下の解析を行った。①Y字水路におけるTTXに対する誘引行動の解析、②電気生理学的なTTXに対する嗅電図の解析、③脳内の記憶因子(NMDA受容体)と下垂体の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(sGnRH)遺伝子の発現解析、④嗅上皮のニオイ受容体遺伝子の発現解析、⑤七尾湾のトラフグ産卵場におけるTTXの検出解析、⑥七尾湾のトラフグ産卵場におけるTTX産生細菌の検出解析。2022年度の解析により、次のような結果を得た。①Y字水路においてTTX (500, 1000, 2000MU)に対して各成熟段階のトラフグ親魚は誘引行動を示さなかった。②1/3海水を用いてトラフグ親魚のTTX(500MU)に対する嗅電図の測定を行ったところ、非常に小さな応答しか得られなかった。③NMDA遺伝子発現量はTTX暴露群の雄で高い傾向がみられたが、sGnRH 遺伝子発現量はTTX暴露群で雌雄とも対照群と差がなかった。④ニオイ受容体遺伝子のマルチプレックスシーケンシングを行いTTX暴露群と対照群の発現量パターンおよび発現量には差は認められなかった。⑤トラフグ産卵場の底砂から公定法に準じて酢酸抽出後、活性炭カラムで濃縮・簡易精製後、LC-MS/MS分析を実施したが、TTXは検出されなかった。⑥次世代シークエンサーmiseq(イルミナ)を用いてトラフグ産卵場の海底堆積物と海水中の微生物群集構造を解析し、TTX産生細菌(Vibrio alginolyticus)の近縁種が検出されたが、TTXを産生しているかは不明であった。以上の結果、トラフグ親魚は稚魚と異なりTTXに誘引されず、TTXが産卵場をする指標にはなっていないと結論づけられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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