研究課題/領域番号 |
20K06227
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
栗田 喜久 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40725058)
|
研究分担者 |
大野 薫 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (10260035)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 二枚貝 / フェロモン / 一斉産卵 / HPLC |
研究実績の概要 |
二枚貝類にみられる一斉産卵行動の高度な同調性の仕組みを明らかにするため、放卵放精時に放出されていると考えられる産卵誘発フェロモンの単離・精製を行なった。まずムラサキインコガイの20個体分の放精液を濾過したのち、電気透析装置で脱塩処理を行い凍結乾燥により濃縮を行うことで、フェロモン溶液を調製した。この濃縮フェロモン溶液(0.5個体分)を、ムラサキインコガイを個別飼育する100ml飼育海水中に滴下するの産卵誘発実験を行ったところ、実験に使用した20個体全てで産卵が誘発された。 次にムラサキイガイ100個体分の放精液を採取し、ムラサキインコガイ同様に濃縮フェロモン溶液を調整した。その後、透析膜を利用した除タンパク処理により、フェロモン溶液に含まれる10KDa以上の高分子物質を除去したものを、逆相カラムを用いたHPLCにより分画した。得られた分画液を産卵期のムラサキイガイに対してバイオアッセイした結果、複数の分画液で産卵誘発活性が確認された。一方で、ムラサキイガイの発育が例年に比べ悪く、産卵誘発実験を十分に行うことができず、HPLCによる精製作業は1段回目を行うにとどまった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ムラサキインコガイおよびムラサキイガイ放精液からの電気透析よる脱塩処理は計画通り成功し、濃縮フェロモン溶液の調製を達成することができた。一方で、今年度は例年よりもムラサキイガイの産卵期が短く、成熟度合いも個体差が大きかったため、想定した回数の産卵誘発実験を行うことができなかったことから「やや遅れている」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は実験自体は計画通り順調に進んでいることから、より長く産卵誘発実験を実施するためムラサキイガイについては、産卵期のずれる九州産・関西産・東北産と複数の産地を利用することで実験期間の長期化を図る。また当初計画では予定していなかったが、予備実験でフェロモン溶液に対して高感度の反応を示し、ムラサキイガイの産卵期から完全に外れる夏季を産卵期とするムラサキインコガイも併用することで、今年度のようなムラサキイガイの発育不良にも対応できるようにする。その上で、両種の濃縮フェロモン溶液をHPLCにて2段回の精製にかけた段階で、質量分析機による候補物質の探索作業を開始する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた学会参加や出張を実施できなかったため、旅費が0円となった。また電気透析装置がキャンペーン価格で購入できたため、計上時よりも予算を抑えることにつながった。
|