二枚貝の一斉産卵のタイミングを同期させる産卵誘発活性をもつ物質について、その分子的実体を明らかにすることを目的として、生理活性物質の単離・生成とその同定を試みた。岩礁域において大型のコロニーを形成し、当研究グループの先行研究から高度に同調的な一斉産卵を行うことが判明しているイガイ科の二枚貝ムラサキイガイを実験対象として、その放精液から他個体の産卵を誘発する物質の単離・生成を行った。最終年度は、ムラサキイガイ約200個体分の放精液を採取し、分析に供した。放精液は海水であるため、その濃縮を行う際には脱塩処理が必要となる。昨年度まではこの処理を、イオン交換膜を用いた電気透析により行っていた。本年度はこの処理を、オープンカラムによる逆相クロマトグラフィーを用いることで、従来より短時間で大容量の放精液の脱塩処理が可能となった。その結果として、電気透析による脱塩処理で得られたサンプルに比べて、明らかに強い活性を示す画分を、より精製度の高い活性物質を含む画分の採取に成功した。本画分について、質量分析に供するための調整を現在進めている。
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