研究課題/領域番号 |
20K06230
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
瀧澤 文雄 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60822913)
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研究分担者 |
末武 弘章 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00334326)
山崎 淳平 北海道大学, 獣医学研究院, 特任准教授 (20732902)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トラフグ / マクロファージ / 単球 / CSF1 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
単球・マクロファージは、自然免疫応答の中心的な白血球であり、病原体に対する初期応答の中枢を担っている。単球・マクロファージの細胞表面分子として、コロニー刺激因子1(CSF1)の受容体であるCSF1受容体(CSF1R)が知られており、魚類においてもCSF1受容体が単球・マクロファージマーカーと利用されている。トラフグには2種類のCSF1R(CSF1RaとCSF1Rb)が存在することが報告されているため、両受容体の組換えタンパク質を作製した。組み換えタンパク質の作製が順調に進んだCSF1Raに対する抗体の作製を先に実施し、作製されたCSF1Raに対する抗体の反応性を調べたところ、抗体は組み換えタンパク質を特異的に認識したが、トラフグ白血球に反応しなかったことから、白血球におけるCSF1Raの発現は認められないか低いことが考えられた。CSF1Rbに対する抗体を現在作製中である。一方、哺乳類においてマクロファージの機能に関わる転写因子のクローニングに成功した。また、マクロファージは老化した細胞の排除にも関わっていることが知られている。そこで、老化赤血球を貪食する細胞がトラフグにもいるか調べたところ、マクロファージ様の形態の細胞が赤血球を貪食することが確認できた。以上から、魚類マクロファージは、自然免疫応答だけではなく、魚体内の恒常性維持にも関わることが示唆された。また、ウイルス感染症に対するマクロファージの役割を調べるためにトラフグ養殖で問題となる口白症のリコンビナントタンパク質の作製も進めており、マクロファージがどのような応答を示すか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
魚類のマクロファージの活性化・分化の指標となるサイトカイン、転写因子、細胞表面受容体の遺伝子を同定し、マクロファージの活性化機構を検証する基盤整備が確立してきた。マクロファージの単離に必要なトラフグの細胞表面マーカーに対する抗体作製が進行中であり、この抗体が出来次第、次の段階に進むことができる。また、トラフグの他にゼブラフィッシュやニジマスのマクロファージの同定が可能になってきたため、これら魚種のうちマクロファージの同定・分離が容易な魚種を選定して研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
トラフグのCSF1Rbの組み替えタンパク質が出来次第、抗体を作製して細胞の同定・単離を行う。また、組換えCSF1bを用いて増殖したトラフグマクロファージの活性化について検討するとともに、免疫刺激後のマクロファージの活性化の仕組みを調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
トラフグの病気が発生し、サンプリングができなかった。2023年度にトラフグもしくは他魚種からサンプルを準備しゲノム解析などを実施する。
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