本研究では、未利用生物資源であるイカ内臓由来新規成長促進因子に着目して、その単離同定を行い、得られたイカ由来成長促進因子の魚類に対する作用機構を明らかにすることを目的とした。 本年度までの研究ではイカ内臓に含まれる摂食および成長促進に効果のある機能性物質のうちのリコペロジンおよび4-ヒドロキシキノリンの魚類飼育実験による解析を行なった。その結果、10μMのリコペロジンを添加した飼料、および1と10μMの4-ヒドロキシキノリンを添加した飼料を給餌したメダカがこれらの化合物を含まない飼料を給餌した対照群と比較して給餌量が増え、平均体長及び成長率が増加し、更に、これらの物質が誘導する消化関連遺伝子の解析では、消化管でのコレシストキニン(CCK)遺伝子の発現と脳でのニューロペプチドY(NPY)遺伝子の発現が、対照群に比べて高くなった。これらのことから、イカ内臓内に含まれるリコペロジンおよび4-ヒドロキシキノリンは、メダカの成長を誘導することが示唆された。 更に、イカ内蔵由来成長促進因子を含む機能性飼料原料の開発のため、魚類未利用残渣のフィッシュソルブルに着目して実験を行ない、フィッシュソルブルの粗精製および逆相液体クロマトグラフィー(HPLC) による分析の結果、フィッシュソルブルに成長を促進する物質が存在する可能性が示唆され、これらのメタボローム解析を行なった。メタボローム解析では、フィッシュソルブルと同時にイカの内臓とマダイ残渣からの抽出物の解析も行なった。その結果、数種類の候補となる物質が得られ、その中からテレフタル酸、ハルマン、グルコースの3種を選定し魚類を用いて解析したところ、テレフタル酸1μMが最も効果的であることが明らかとなった。また、遺伝子解析では、これらの物質が消化関連遺伝子の発現を誘導することが示された。
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