研究実績の概要 |
本研究では薄膜型酸素センサー(オプトード)を用いてバイオフィルム呼吸阻害活性を測定するバイオアッセイ法を確立し、さらに、それを用いて海洋生物が表皮をバイオフィルムの付着から守るために用いている対バイオフィルム防御物質を精製し、環境に優しい付着阻害剤の開発に貢献することを目的として研究を行った。最終年度はバイオフィルム呼吸活性測定用のオプトード膜の増感剤として用いた酸化チタン粉末の凝集を凝集の程度が低いうちに膜を乾燥させることで解決できたため、この膜を用いて海洋生物が体表亜kら放出する化合物のバイオフィルム抑制活性の研究を進めた。アメフラシの皮膚分泌物のバイオフィルム呼吸抑制活性を試験したところ、活性が見られたため、分泌物を液ー液分配、ゲル濾過クロマトグラフィー、脱塩装置、逆相クロマトグラフィー等を用いて精製を進め、複数の活性成分が存在することを見出した。これらの化合物のうち一部はイセエビに対する摂食抑制効果を持っていた。これらの構造についてはさらに精製を進めながら核磁気共鳴および質量分析を用いて解析中である。また、カミクラゲの化学防御機構である皮膚分泌物についても研究を雄進めた。カミクラゲは捕食者に襲われるなどして皮膚に損傷を受けると直鎖のアルコールとアルデヒド類を防御物質として放出する。これらはイセエビなどの捕食者に対して摂食阻害活性を持つ。これらはバイオフィルムに対する防御物質としても働くと予想されたので、その呼吸抑制活性を試験した。その結果、2種の化合物(E)-2-nonenalと(E,Z)-2,6-nonadienalに強い呼吸抑制活性を見出した。これらの結果は海洋に棲む動物の皮膚分泌物には多くのバイオフィルム抑制活性をもつ化合物が含まれることを示唆している。以上のように、海洋生物から環境にやさしいバイオフィルム付着阻害活性物質のリード化合物を発見することが出来た。
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