パルブアルブミンは魚類共通のアレルゲンであり、患者のIgE抗体が結合するIgE結合エピトープは様々な魚種で類似すると考えられている。これまでに数魚種でポリペプチド鎖状上の一次構造エピトープが報告されているが、いずれも魚種間で共通性がない。我々はこれまでに、マサバパルブアルブミンのエピトープを構成するアミノ酸残基が、一次構造上では断続的に点在し、折りたたまれると集結してエピトープが出現することを明らかにしている。これら残基は多くの魚類で同一または同じ性質のアミノ酸であるみられるが、マサバパルブアルブミンと同じ立体構造エピトープを有することは確認できていない。そこで、マサバパルブアルブミンの分子表面上のエピトープにおける静電ポテンシャルと、アレルゲンとして報告のある魚類パルブアルブミン、魚類パルブアルブミンと交差性があるまたはあると疑われる両生類、爬虫類および鳥類のパルブアルブミンの同領域における静電ポテンシャル、ならびにアレルゲンとしての報告がない哺乳類パルブアルブミンの同領域における静電ポテンシャルを比較した。その結果、マサバパルブアルブミンのエピトープにおける静電ポテンシャルのパターンは魚類パルアルブミンでもほぼ同じであり、両生類、爬虫類および鳥類では僅かに異なるパターンを示した。一方、哺乳類パルブアルブミンの静電ポテンシャルは電位が著しく異なる領域が存在した。これらのことから、限られた一部の領域とIgE抗体との間に強く働く斥力により、IgE反応性が低下または消失するものと予想された。
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