研究課題
白血球移植により,特異的な液性免疫が伝達できるかを調べた.すなわち,OB1系統のクローンギンブナの腹腔内に貝ヘモシアニン(KLH)を複数回接種し,経時的に血中抗体価をELISA法で測定した.その結果,4週後には十分な抗体価の上昇(エンドポイントで×25600)が見られた.そのため,これらKLH-免疫個体より,腎臓・脾臓などの白血球を分離し,免疫していない同系ギンブナの尾部血管より白血球を移植後,KLHやニワトリ卵白アルブミン(OVA)を接種した.KLH-免疫個体からの白血球を移植されたギンブナは,同じ抗原であるKLHに対して反応が早く,2週間後には抗体価がエンドポイントで×1600となった.一方,同様の個体に,OVAやコントロールとしてPBSを接種したものでは,×100以下であった.これらの結果から魚類においても移植によって液性免疫の獲得が可能であることが判った.上記と同様に白血球移植により特異的な細胞性免疫が伝達できるかどうかも検討している.すなわち,OB1系統のクローンギンブナに別系統(S3N系統)のウロコを複数回移植した後,この感作個体より未感作個体に白血球移植を行い,S3N系統のウロコ拒絶反応を観察している.その他にも,移植する免疫細胞を選別するため魚類のCD4分子であるCD4-2分子または魚類独自の免疫グロブリンアイソタイプIgTのモノクローナル抗体を作製中である.
3: やや遅れている
現在,F1・GFP-クローンギンブナより採卵し,F2-GFP陽性魚を作製中であるが,昨年はF1魚の発育が不十分で卵を得ることができなかった.今年の春(連休明け)にGFP陽性クローンギンブナの作製を再度試み,多数のF2-GFP陽性魚を作製したい.
研究実績の概要に記載したように,白血球の移植により,液性免疫の伝達は可能であることが判った.今後,GFP陽性個体をドナーとしてまたGFP陰性個体をレシピエントとして,同様の実験を行い,GFP陽性BおよびT細胞が魚体内のどの部位に集まり,増殖するのかを調べる予定である.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)
Developmental & Comparative Immunology
巻: 108 ページ: 103671~103671
10.1016/j.dci.2020.103671
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Journal of Veterinary Medical Science
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