クローンギンブナ(Carassius auratus langsdorfii)は天然で雌性発生を行うため,その子孫は全て遺伝的に均一なクローンである.従って,同系統間での細胞移植において免疫拒絶を起こさないことから,魚類免疫細胞の動態解析のモデルとして期待される.そこで本研究では,ドナー細胞をレシピエント体内で識別可能にするため,緑色蛍光タンパク質遺伝子を導入したトランスジェニック・クローンギンブナの作出とその系統の確立を試みた. 【方法】トランスポゾンベクター (アフリカツメガエルのEF-1プロモーターとGFP遺伝子を含む)とTol2転移酵素をコードするmRNAを受精直後の胚に微量注入した.注入後の胚および稚魚について,蛍光顕微鏡下で蛍光を確認した.また,フローサイトメトリー (FCM)による末梢血白血球の解析を行った. 【結果】顕微注入により,強く蛍光を発するキメラ稚魚が2尾得られた.このキメラ魚を成長させ内1尾からF1魚を得た.その結果,14.9 %のF1魚がGFP陽性であり,これらは体全体が蛍光を発していた.さらに,これらF1魚からF2魚を得たところ,100 %の割合でGFP陽性魚が得られた.このように,クローン発生を行うギンブナではトランスジェニック系統の確立が容易であった.次に,これらGFP陽性F2魚の末梢血白血球をFCM解析したところ,すべてのF2魚の白血球(顆粒球,単球,リンパ球)および栓球がGFP陽性であった.一方,赤血球は陰性であった.このようにリンパ球を含むすべての白血球がGFP陽性のクローンギンブナ系統が確立できた.現在,これらGFP陽性ギンブナの腎臓から造血細胞を分離し,放射線照射により造血能を破壊した野生型ギンブナに移植を行っているが,移植150日後においてもGFP陽性造血細胞は野生型個体に定着し,ほとんどの血液細胞はGFP陽性のものに代わっていた.
|