研究課題/領域番号 |
20K06247
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
米加田 徹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(南勢), 主任研究員 (40597944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クルマエビ / 抗微生物性ペプチド群 / 免疫応答 / 血清プロテオーム |
研究実績の概要 |
クルマエビの血リンパ液中に存在する抗ウイルス応答関連因子のうち抗微生物性ペプチド群の挙動を把握することを目的として、その因子の特定や検出系の構築を試みている。 クルマエビの血リンパ液にはヘモシアニンと呼ばれる酸素を運搬するタンパク質が存在しているが、ヘモシアニンの血リンパ液中の存在量は極めて多く、血リンパ液中総タンパク質の9割以上を占めている。そのため、存在量の少ないタンパク質の量を測定することは非常に困難であるため、解析の際にはヘモシアニンをできる限り除去する必要がある。 これまでに,高分子ポリマーや硫酸アンモニウムなどを活用したタンパク質の凝集沈殿等により多含有タンパク質の除去を試みてきたが,異なるサンプル間で安定した処理を行うことが極めて困難であった。本年度は、複数の限外ろ過カラムを使用することで,効率的かつ安定的にヘモシアニンを含む高分子側の多含有タンパク質を除去可能であることが明らかとなった。本解析系により、血リンパ液中の微量タンパク質の量的把握がより高精度に実施可能となった。 抗ウイルス応答時に変動するタンパク質を捉えるために,ウイルス構造タンパク質あるいはウイルスを接種し,抗ウイルス応答を誘導させたクルマエビの血リンパ液を採取し、血球分画および高分子側多含有タンパク質を除去した後,プロテオーム解析を実施した。解析の結果、抗微生物ペプチドとして知られるC型リゾチームが検出され,ウイルス接種後48時間後に対照区と比較して約1.5倍の発現量の増加を認めた。このようにウイルスの感染を受けて血清中にC型リゾチームの分泌が促進されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清プロテオーム解析において最も困難であった多含有タンパク質の除去について,効率的な手法を確立し,本法を活用したプロテオーム解析により,これまで得ることのできなかったタンパク質の挙動を検出することが可能となった。また,これまでタンパク質レベルでの挙動が明らかとされていなかったC型リゾチームがウイルス感染時に増加する傾向が認められ,クルマエビの新たな免疫応答が捉えられた。このように当初の計画に沿って順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの多含有タンパク質の除去処理は,低分子側から高分子側のタンパク質が一様に検出されるようにマイルドな条件により実施してきた。今後さらにサンプル処理条件を検討し,より低分子側にシフトした解析を実施することにより,多くのペプチド群の検出を図る。また,質量分析では検出が困難な重要な抗ウイルス応答候補因子については,ペプチド抗体等を作製し,ELISA法などによる検出についても実施する。
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