研究課題
クルマエビの血リンパ液中に存在する抗ウイルス応答関連因子のうち抗微生物性ペプチド群の挙動を把握することを目的として、その因子の特定や検出系の構築を試みている。クルマエビの血リンパ液中にはヘモシアニンと呼ばれるタンパク質が極めて多く存在しており、微量タンパク質の検出における阻害要因となっていた。これまでに、様々な手法によりヘモシアニンの除去を試みたところ、限外濾過カラムにより効率良く当該タンパク質を除去可能であることを見出した。また、この処理法を用いて、血リンパ液中タンパク質の網羅的解析を実施したところ、抗ウイルス応答を誘導させた個体において血リンパ液中のC型リゾチームの分泌量が増加することが明らかとなった。これまでの網羅的遺伝子発現解析では、抗菌ペプチドとして知られる抗LPS因子の増加が認められていた。しかしながら、血リンパ液のプロテオーム解析ではこれらの因子は検出限界以下となり、その挙動をとらえるには至らなかった。そこで、血リンパ液ではなく、血球中のタンパク質も併せて解析を実施した。その結果、3種の抗LPS因子ファミリーが検出され、またこれらのタンパク質の抗ウイルス応答誘導群の発現量は対照群よりも高い値を示した。このように、抗LPS因子は血球中で産生され、抗ウイルス応答時にはその産生量が増大することが明らかとなった。カブトガニにおける既往の知見によると抗LPS因子は抗菌ペプチドとして血リンパ液中にも分泌されている可能性が高いため、より鋭敏な手法による当該因子の検出系確立に着手している。
2: おおむね順調に進展している
クルマエビの血リンパ液や血球から抗微生物性ペプチドを複数種検出し、それらを同定するに至った。また、抗ウイルス応答を誘導した個体での挙動が部分的に明らかとなり、当初の計画に沿った成果が得られている。これらの知見は、過去の網羅的遺伝子発現解析の結果を支持するものであり、今後の研究の進展に大きく寄与することが期待される。
これまでに検出された抗ウイルス応答関連因子は低分子であるものが多いため、より低分子域にシフトした解析を実施することで、標的因子の検出感度の向上を図る。また質量分析では検出感度が限定的であるため、イムノアッセイをを利用した目的因子の検出系の開発に臨む。これらの手法により、血リンパ液中での標的因子の挙動をより高精度に把握し、抗ウイルス応答との関連性を追求する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Developmental & Comparative Immunology
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