研究課題/領域番号 |
20K06254
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (90292672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農地防災 / 防災意識 / フィリピン |
研究実績の概要 |
今年度はフィリピンにおいて、防災・減災に対する住民意識や農地の減災機能に対する評価に関するWeb調査を行った。本研究では、主として都市的地域を研究の対象としていることから、マニラ首都圏から200件、その南方に位置するカビテ州から100件、ラグナ州から100件を集めることとした。Web調査は、フィリピンでも一般的な調査手法になっている。しかし、50歳以上の調査協力者(登録モニター)は、まだその数が限られている。他方で、若い世代の調査協力者はとても多い。また、男性より女性の数が多い。そこで、男女均等の割付に加えて、25~34歳、35~59歳の2区分についてのゆるやかな均等割付を行う設計とした。得られたサンプルの年齢構成は、平均値が36歳、範囲は25歳~59歳となっており、バランスのよい資料となった。なお、マニラ地域とその他の2地域で、主要な個人世帯属性について統計的に有意な違いは見られなかった。 調査結果の要点は以下のとおりである。まず、避難場所に対する認識は、総じて自宅が安全であると考える者が多い。他方で台風については、地震よりも村役場や親戚宅といった近しいコミュニティーがある場所を安全と考える傾向があった。自然災害によるインフラや構造物の破壊、水害の発生を危惧する声は当然多いが、それに加えて病気や食糧不足、デマの流布を強く懸念するグループが存在した。また、災害発生の原因として、温暖化、不法伐採、山地開発という項目を挙げた者と、計画性のない都市化、ヒートアイランド、舗装が強く影響しているとする者とに傾向が分かれ、後者のグループには農業の負の影響を指摘する者も見られた。農業・農地の防災減災機能については、多くの者がその効果を期待していた。今後は、詳細な統計分析を行い、変数間の関連性をより詳細に検討するとともに、これらの認識に国別の違いがあるかを検討するため追加の調査を実施したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、研究方針の見直しを行い、本年度はその計画に沿ってフィリピンでの意識調査を実施した。当初計画による予算では、複数ヵ国の調査が出来なかったころから、文化・制度的な比較分析を行うことが出来ず、その点で次年度の研究に向けた十分な成果を出すことはできなかった。他方、災害防災に対する意識と関係性が深い要因を見出すなど、一定の成果は得られた。これらのことから、全体としてはほぼ計画どおり進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度と設問内容や実施条件を揃えた比較可能な形でのWEB調査を実施する。フィリピンと自然災害リスクの面で共通性が高いものの、文化・制度の異なる東南アジアの国を主たる対象国とし、予算的に余裕が出れば日本含めた複数ヵ国でも調査を行いたい。そのため、まず、調査対象国の選定作業を急き、なるべく早い時期に実査に移る予定である。最後に、これらの調査を通して、都市・農村の住民の多様性(地域性、社会制度、環境への考え方)と期待される農業・農地防災ついての要件把握を行う。
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