本研究は,環境保全型農業直接支払いの下でわが国の水田農業経営が有機水稲を導入するか否かを調査した.分析にあたり,最大化すべき経済目的関数と最小化すべき環境目的関数を持つバイオエコノミックモデルを作成した.環境目的関数は,ライフサイクルアセスメントを用いて定式化された.多目的最適化分析の結果,有機水稲は所得を増大する一方で必ずしも環境を改善するとは限らないことから,水田農業経営においてその導入が制約されるかもしれないことが明らかになった.また,環境保全型農業直接支払いの制度設計改善に関して政策的示唆を与えた.
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