研究課題/領域番号 |
20K06261
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研究機関 | 旭川大学 |
研究代表者 |
近藤 功庸 旭川大学, 経済学部, 教授 (20305874)
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研究分担者 |
山本 康貴 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90191452)
澤内 大輔 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90550450)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農業生産性 / 農産物生産費格差 / 日本 / 中国 / 韓国 / 地域別貢献度分析 / 経済収束分析 / 食料自給率 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日中韓3か国において、RCEPを含むメガFTAの下で、国際競争力の指標となる国家間の農産物生産費格差の大きさとその要因、貿易自由化圧力と気候変動が農産物生産費へ及ぼす影響分析を通じ、国際競争力向上と気候変動への対応が両立した食料自給率向上への示唆を与えることにある。2021年度はコロナ禍で研究活動が引き続き制限される中、すでに入手したデータなどを用いて以下の研究活動を実施した。 1.日本農業を対象とした研究に関しては、農業政策の中心的目標の一つである農業所得の安定性確保に着目し、農業者戸別所得補償制度における直接支払いが稲作所得の不安定性に対する影響を分析するため、分散の要因分解分析を適用した。その結果、直接支払いのうち、米の所得補償交付金は経済的安定性の面で望ましい効果を有していたことと、「農業経営の安定」という戸別所得補償制度の主目的に合致していたことが明らかとなった。われわれは、この研究成果を欧州農業経済学会などでオンライン報告を行ったほか、稲作所得の不安定性に対する影響を分析した論文がAustralian Journal of Agricultural and Resource Economicsに掲載された。 2.中国農業を対象とした研究に関しては、中国酪農を分析対象として規模に関して収穫一定を仮定したmultilateral TFP indexによる生産性水準の規模間格差を比較・分析した。その結果、中国酪農において、大規模経営は中小規模経営よりも生産性水準が高いという明瞭な傾向が見られないことが示唆された。われわれは、この研究成果を欧州農業経済学会でオンライン報告した。さらに、この論文は『農業経済研究』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間の2年目(2021年度)は研究実績の概要に記したように、農産物生産費格差の要因の一つである農業生産性に関し、日本における稲作生産性の計測結果を用いた分析を行った。また、中国に関しては酪農生産性の分析を行うことができたことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現状ではコロナ禍の終息時期が未だ見通せない状況であるが、本研究課題の今後の推進方策として、3年目の2022年度は日韓両国に関して、稲作以外の作目に生産性分析の対象を拡大すること、中国に関しては酪農以外に分析対象を拡大することで、農業生産性の地域別貢献度分析や経済収束分析、貿易自由化圧力と気候変動が農産物生産費へ及ぼす影響分析を実施する方向で研究を進める。さらに国際競争力向上と気候変動への対応が両立した食料自給率向上への示唆を与えるため、日中韓3か国の生産費格差を包括的に分析するためのデータ収集に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナ禍の影響で研究活動が制約を受けたため。2022年度はコロナ禍の中でも可能な限り研究を推進する予定である。
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