研究課題/領域番号 |
20K06263
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
阿久根 優子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90363952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農産物・食品貿易 / 新々貿易理論 / フードシステム |
研究実績の概要 |
本研究課題は、農産物・食品の貿易について新々貿易理論に依拠して実証研究を行うことを目的とする。令和3年度は、日本の農水産業・食料品企業の海外事業の状況と企業特性や企業活動との関係について次の2点を精査した。 1つは、国内・海外事業を行う企業の特性の違いについてコルモゴロフ・スミルノフ検定により検討した。その結果、企業規模と生産性は、国内専業企業よりも輸出企業、それよりも海外直接投資(FDI)を行う企業の順で高くなることを確認した。また、これまでデータの入手限界から知りえなかった輸出形態別での企業特性について、間接・直接輸出の双方を行う企業のほうが、直接輸出のみを行う企業よりも企業規模は大きく、生産性も高いことがわかった。一方、間接輸出のみを行う企業は、他の輸出形態の企業との間に有意な違いはなかった。一般的に、間接輸出と直接輸出には追加的固定費用の違いがあるとされるが、わが国の農水産物・食品企業では両者の違いはみられなかった。さらに、いくつかの業種では、輸出企業やFDI企業よりもはるかに高い労働生産性を有する国内専業企業の存在も確認された。 もう1つは、海外事業選択への企業特性と企業活動の影響について多項ロジットモデルを用いた分析によって明らかにした。輸出とFDIの選択確率には、企業規模と生産性が正で有意に影響しており、輸出よりもFDIのほうがより大きな企業規模で高い生産性が必要であることが示された。また、両特性が輸出では同程度の影響度を持つのに対して、FDIでは企業規模のほうがより強く影響することがわかった。さらに、JETRO(日本貿易振興機構)による一定の条件を満たした企業リストにある商社との製品取引は、輸出選択に対して正で統計的に有意であり、同リスト掲載の企業と取引がある場合の輸出選択確率は、ない場合と比べて9.8ポイント上昇することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の主要な研究計画である海外事業に関わる企業特性や企業活動の分析について予定どおりすすめられた。また、令和4年度以降に計画している貿易要因に関する分析の方向性を確認するために予備分析も行うことができた。これらの状況から、上記のように判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行った2つの研究発表で得たコメントを踏まえて学術誌への投稿を行う予定である。また、予備分析をもとに、非関税障壁やFTA・EPAといった貿易協定の効果について精査した分析を行い、得られた結果の妥当性を検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍によって計画していた海外で開催される国際学会への参加が難しく、渡航経費を使用しなかったためである。また、当初計画より成果が増え、学会報告や英文校閲など研究成果の発表にかかる経費が今後予想され、予算の効率的執行に努めたためである。 <計画>分析は計画通り進んでいるので、今後の国際学会での報告や英文校閲など研究成果を発表するために使用する予定である。
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