研究課題/領域番号 |
20K06269
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小林 創平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (10414765)
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研究分担者 |
國光 洋二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 再雇用職員 (30360390)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大豆 / 単収 / 全要素生産性(TFP) / パネルデータ / 計量経済分析 / 規模拡大 |
研究実績の概要 |
1987~2015年の大豆生産費統計を用いて、生産技術水準を示唆する全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)をトルンクビスト指数により計測して、TFPと単収の動向を北海道と都府県の2地域区分で明らかにしているが、このTFPの変動をより詳細に分析するために、トルンクビスト指数のTFPに加えて、従来のマルムクイスト指数よりもマルチラテラルな比較に適するFare-Primont指数のTFPを包絡分析法により計測した。計測したFare-Primont指数のTFPは、トルンクビストTFPと同様の動向を示し、両指数による計測結果の頑強性を確認した。大豆作における経営体あたりの作付規模は、過去30年間に約11倍に拡大していることから、TFPや単収に対するこの拡大の影響を定量的に評価するため、Fare-Primont TFPや単収を被説明変数、作付規模や年次を説明変数とするパネル回帰分析を行なった。その結果、北海道では規模拡大とその拡大に非依存的な技術進歩の両方がほぼ同程度にTFPを向上させ、後者の一部は単収改良型の技術進歩であること、都府県では規模拡大によるTFPの上昇は生じたものの、その上昇は規模拡大に非依存的で経年的な技術衰退により相殺され、後者の一部は単収改良型の生産技術の衰退であることが示された。さらに、パネル回帰分析の説明変数に種苗、肥料、農機具等の各種生産要素を加えて、TFPや単収の変動要因を詳細に分析したところ、これらの向上には肥料、農業薬剤、農機具の賃借等が関与している可能性が示された。これらの分析結果は学会等で発表するとともに、一部は学術論文として公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通りに、大豆作のTFPをトルンクビスト指数により地域別、規模層別に定量化し、TFPと単収の時系列トレンドをこれら区分間で比較分析し、学術論文として公開している。また、包絡分析法によりFare-Primont指数のTFPも計測し、トルンクビストTFPの結果の頑強性を確認するとともに、TFPや単収を被説明変数、作付規模、年次を説明変数とするパネル回帰分析を行なって、それらに対する規模拡大の寄与度を明らかにしている。さらに、種苗、肥料、農機具等の各種生産要素の投入量データを準備して、それらを説明変数に加えることで、TFPや単収の変動要因を絞り込んでいる。一方で、田作と畑作の2地目におけるTFPの計測結果の取り纏め及び、海外渡航が困難なこともあって大豆作TFPの国際比較分析は遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度までのトルンクビストとFare-Primont指数による大豆作のTFPの計測結果を整理して、TFPと単収に対する作付規模と年次の影響に関する論文を投稿する。TFPや単収を被説明変数とし、肥料、農薬投入量や圃場整備状況等の生産関連因子を説明変数とするパネル計量経済分析を継続し、それら生産関連因子の効果をより詳細に分析する。大豆作のTFPや単収は各年の気象条件により変動し、この変動の制御は上記のパネル計量経済分析にとって重要であるため、大豆の生育モデルを活用して各年の気象条件に基づく収量予測値を準備し、それを説明変数に追加することで、この変動の制御を試みる。大豆作TFPの国際比較分析も予定するが、コロナ禍により困難や遅延がある場合は、国内の大豆生産費統計の個票データの整理と分析に取組んで、研究の深化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国的なコロナ禍に伴う業務の制約等により、研究分担者との打合せの機会を十分に設けられず、計測結果の分析、取纏めや海外渡航を含む国際比較分析が遅延したため、これらに関連する経費が次年度使用額となった。
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