研究課題/領域番号 |
20K06272
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水池 義治 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30545215)
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研究分担者 |
橋本 直史 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (50649473)
天野 通子 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (40643250)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地理的表示 / 西尾の抹茶 / 登録取り下げ / 地域団体商標 / 十勝ラクレット |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績は、農産物・食品認証制度の性格と制度間の比較分析、並びに日本地理的表示保護に登録されていた愛知県の「西尾の抹茶」、同表示登録を目指す北海道の「十勝ラクレット」、地域団体商標登録の徳島県の「なると金時」を対象とした事例分析である。 日本の認証制度における「標準化」(制度認証による生産・流通過程の均一化)作用は、投入材・作業などへの制約が多い有機JASで比較的強く、J-GAPなどでは作業や投入材を必ずしも制約しないため弱いことがわかった。一方、地理的表示保護の場合、生産者組織で策定する生産基準の水準が「標準化」作用を左右すると思われる。 愛知県の「西尾の抹茶」は地理的表示に登録されたのは抹茶の最上位規格のみである一方、地域団体商標は抹茶の規格全体をカバーするものであった。地理的表示の厳格な表示規制の結果、最上位規格以外の製品では「西尾の抹茶」表記ができなくなって製品展開が制約され、地理的表示の登録を取り下げるに至った。一方、北海道の「十勝ラクレット」は地理的表示の対象となるのは下位規格の位置付けで、地理的表示認証をベースにして地域の生産者を幅広く組織し、その上で共同熟成を行って上位規格品の生産、販売を狙っている。よって、生産者組織にとって、地理的表示は組織の排他性を弱める役割はあるものの、その販売戦略上は必須の認証では必ずしもない。徳島県の「なると金時」は地域団体商標に登録され、地域ブランド化が志向されているが、個々の生産者が農産物の選別や販売先を決定する「個選・個販」が主体であり、現状では国内市場を志向している。そのため、より需要拡大が期待される輸出市場に対応した価格水準やロット確保が困難になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による出入国制限・移動制限措置の実施によって、海外調査は全て実施不可能であるほか、国内調査も実施に大きな制約を受け、予定していた調査の一部しか実施できなかったためである。ただし、研究代表者と研究分担者の所在地に近い地域を対象とする調査、並びに電話やオンラインによる調査は行うことはできた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による出入国制限は少なくとも2021年度は継続されると思われるため、海外調査の実施に備えて調査予定対象の情報収集を継続して行うほか、場合によってはオンラインによる予備調査も検討する。 海外調査の実施が困難である状況が継続することを踏まえ、国内事例の調査を最優先で実施するほか、事例対象の拡大を検討する。また、電話やオンラインなどの遠隔調査に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動制限・自粛要請が緩和された時を見計らって迅速に調査が実施できるよう、準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動制限・自粛によって予定していた対面調査が実施できず、旅費執行が行われなかったためである。ただし、電話やオンラインによる遠隔調査は行っている。 次年度の使用計画は、新型コロナウイルス感染症の流行が沈静化している時期を見計らって行う予定の国内の対面調査の旅費に充てる。当初計画の調査事例に加えて、海外調査の代替措置として国内の調査事例を複数追加する。
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