研究課題/領域番号 |
20K06272
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水池 義治 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30545215)
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研究分担者 |
橋本 直史 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (50649473)
天野 通子 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (40643250)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GAP / 小売業 / サプライチェーン / アニマルウェルフェア / 民間認証 / 欧州 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は、GAP(Good Agricultural Practice)を対象にグローバル企業による認証導入が農業・水産分野に与えた実証研究(2022年度に分担執筆書籍として刊行予定)、養殖ブリを対象にグローバルGAPを導入して輸出を行う水産企業の事例研究、主に欧州を対象とした文献研究を通じた民間認証をベースとするアニマルウェルフェア(AW)導入の社会学的考察である。 グローバル食品関企業の導入するGAP認証の影響力は多大であり、特に水産領域における資源管理認証制度の整合化過程が顕著である。今後も、企業の社会的責任、持続可能性に関する認証制度の本格的利用が模索され、官民挙げた普及・導入が進められていく可能性がある。しかし、現時点での国内におけるGAP認証の動向は”認証取得が先ずありき”の施策展開の帰結であり、大手小売業向けの対応は低位に留まっている。このことは、巨大小売業に適合的な合理化、サプライチェーン構築・強化に適合的な規格・認証制度の導入ではなく、輸入品に席巻され価格水準自体が”低空飛行”を続けてきた市場条件の改善、産地ならびに広く農家・漁家を含めた一次産業の持続性の確保が先決なことを示唆する。 アニマルウェルフェアについては、欧州では近年、国家による規制ではなく、主として小売業・NPOに主導されたAWを含む民間認証の普及によってAW推進が図られている。民間認証の取得は任意であるが、巨大小売業の寡占化によって畜産生産者は実質的に認証取得を強制される関係が生じており、民主主義的なプロセスや透明性、経済の公平性といった観点から問題と指摘されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による出入国制限・移動制限措置の実施によって、海外調査は全て実施不可能であったためである。加えて、国内調査も実施に大きな制約を受け、予定していた調査の一部しか実施できなかったためである。ただし、研究代表者と研究分担者の所在地に近い地域を対象とした対面調査、並びに電話やオンラインによる調査は行うことはできた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による出入国の困難さは少なくとも2022年度前半までは継続されると思われるため、2022年度内に研究期間を1年延長した上で、2023年度の海外調査の実施に備えて調査予定対象の情報収集を継続して行い、場合によってはオンラインによる予備調査も検討する。 海外調査の実施が困難である状況が継続することを踏まえ、国内事例の調査を最優先で実施するほか、事例対象の拡大を検討する。また、電話やオンラインなどの遠隔調査に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動制限・自粛要請が緩和された時を見計らって迅速に調査が実施できるよう、準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動制限・自粛によって予定していた対面調査が実施できず、旅費執行が行われなかったためである。ただし、電話やオンラインによる遠隔調査は行っている。 次年度の使用計画は、新型コロナウイルス感染症の流行が沈静化している時期を見計らって行う予定の国内の対面調査の旅費に充てる。当初計画の調査事例に加えて、海外調査の代替措置として国内の調査事例を複数追加する。なお、次年度中に研究期間の1年間延長を行う。
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