研究課題/領域番号 |
20K06272
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水池 義治 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30545215)
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研究分担者 |
橋本 直史 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (50649473)
天野 通子 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (40643250)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機畜産物規格(OLPS)) / アニマルウェルフェア / 適正養殖規範(GAP) |
研究実績の概要 |
第1に、米国農務省による有機畜産物規格(OLPS)改定を検討した。同規格でのアニマルウェルフェア(AW)規制が大幅に強化され、欧州連合(EU)や米国カリフォルニア州のAW規制と同水準となった。これは、有機規格は高度なAW配慮規制を含むという消費者の期待に対応したものである。畜産生産者は施設整備への追加投資と高度なマネジメント能力が求められ、特に中小経営に対する有機サプライチェーンからの退出圧力が強まる懸念があると指摘した。米国の有機規格改定は、日本の有機JASにおけるAW規制の今後の議論に影響を及ぼす可能性がある。 第2に、日本の水産業における適正養殖規範(GAP)の成果と課題である。西日本の養殖産地では府県と漁協連合会とが連携してGAPを策定していたが、これは養殖業者が生産プロセスを公開し、食品安全を確保することを目的としていた。長崎県と宮崎県を対象とした事例研究は、GAP導入の背景と目的、体制、管理ポイントは各県で異なるものの、食品安全を目的としている点は共通しており、状況に応じた認証スキームの円滑な実行体制を可能としていた。 第3に、熊本県と徳島県の青果物産地を対象とする単位農協と農協連合会との取り組みである。熊本県では、農協連合会が設置した「青果物コントロールセンター」は、安定供給体制の確立により、安定販売や取引価格の安定に寄与しており、他産地にとっても参考になる取り組みといえる。徳島県では、単位農協の販売量はコロナ禍で増加したものの、それは産地側の努力の結果ではなく、コロナ禍の一時的な需要増が背景にあり、取引価格自体は下落した。価格維持・上昇に向けて、安定供給体制の構築に加え、何らかの認証スキームによる取引の持続性強化が必要である点が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況で「やや遅れている」とした理由は、2023年度に実施を計画していたイタリアおよびフランスにおける青果農協と地理的表示認証団体に対する現地調査を延期したためである。その理由は、急激な円安による海外調査に伴う費用高騰、ならびに調査受け入れ対象機関とコーディネーターの都合による日程変更が主たるものである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も依然として円安進行の可能性がある。そのため、24年度中の海外調査を実現するため、円安のさらなる進行も見据え、調査先の限定と滞在期間の短縮も検討する。目的に向けた適切な事例選択を行うため、既存文献を通じた情報取集に加え、イタリアとフランス現地への留学経験もある研究者や現地滞在の研究協力者の助言も受けつつ、限られた期間で目的達成が可能な調査を改めて設計し直す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施を計画していたイタリアおよびフランスにおける青果農協と地理的表示認証団体に対する現地調査を、2024年度に延期したためである。2024年11月、あるいは2025年3月にイタリアとフランスにおける現地調査を実施する予定であり、それに費用を支出する。
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