研究課題/領域番号 |
20K06275
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
榎本 弘行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30453369)
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研究分担者 |
竹本 太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10537434)
中島 正裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80436675)
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90282970)
澤 佳成 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70610632)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農地法改正 / 法人の農業参入 |
研究実績の概要 |
本年度は、株式会社を主とする一般法人の農地所有権取得の自由化に踏み切った場合の法的諸問題についての文献研究を行った。大きく分けて二つの点が明らかになった。 一つ目は平成一二年の農地法改正時に、同じような議論がされていたことが判明したことである。すなわち、実はこの改正で、株式会社であっても株式の非公開会社であること等の一定の要件さえ満たせば農業生産法人(現「農地所有適格法人」)となる道が開かれていた。しかし、ここで非公開会社であることが要件とされたのは、株式公開会社に道を開けば、株式譲渡自由の原則によって、株式は自由に株式の譲渡を行うことができ、農業関係者以外の第三者が株式を取得しまう可能性が生じる。そして、その第三者が株式をさらに取得し、会社内で次第に増大することで、経営支配権が農業関係以外の者に移転し、農地が農業以外の目的に利用されてしまうことになる。これにより、農業の衰退を引き起こす可能性が出てきてしまうためである。所有権取得だけは未だに法人に認められていないが、この議論は平成一二年改正の上記議論がそのまま当てはまるので、今後これを基にさらなる検討が必要である。 二つめの論点は、憲法問題である。まず、これら株式会社に対する規制は、憲法で保障される財産権の侵害にあたるものとして違憲ではないかという論点がある。最高裁は、これを合憲と判断している(最小判平成一四年四月五日刑集五六巻四号九五頁)。それでは、今後株式会社の農地所有権取得を可能にする農地法改正が行われた場合、逆に地域住民の憲法上の権利(特に経済的社会的弱者の生存権)を侵害しないのかが問題になる。これまでにそれを判断した判例はないが、理論的には考え得る。今後この点検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は調査を中心とする実証研究であったが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、調査が二年ほどできない状況にあったため、期間全体として進捗に遅れが生じている。加えて、研究代表者の体調不良が続いていたことも、遅れの原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度(本年度)は、上記理由により進捗の遅れが生じたため、当初の調査の規模・内容を縮小する。地域外の株式会社が、ある地域に参入したケースで、(1)中途で農地維持が不可能となった場合の原因とその後の農地の行方に関する調査を行い、また、(2)株主、取締役会の構成員及び代表取締役は、①農地維持の危機に直面したことがあるか、②その場合にどのように危機を乗り越えたのかに関する調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナウイルス感染症の流行の影響で各種調査が行えなかったため。
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