研究課題/領域番号 |
20K06280
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
森 佳子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (40346375)
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研究分担者 |
内山 智裕 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (80378322)
鈴村 源太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (90356311)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農業経営の財務構造 / 農業経営の統治 / 経営支援 / 農業の成長産業化 / 農業経営の組織文化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、民間信用調査の調査結果を用い、農業経営の財務構造と統治のダイナミズムについて分析し、農業金融問題への新たな分析枠組みの導入可能性の検証を行うことである。民間信用調査は、複数年の財務諸表に加え、取引銀行や出資関係、取引先など、広く企業統治にかかわる情報を有しており、これまで手薄であった農業金融分野におけるミクロ的視点による実証を可能にする。本研究では、90年代以降、めざましい発展を遂げている中小企業金融の分析枠組みにより、多様な農業経営主体と資金供給主体(政府・民間金融機関・仕入先)との取引関係等の分析を行い、農業の成長産業化に資する農業金融の役割や政策課題を明らかにすることをめざす。 本研究の課題は、以下の二点に集約される。第一は、民間信用調査から、農業金融のミクロ的視点の分析に資する情報の検討を行い、構築したデータベースから、農業経営の財務構造と統治のダイナミズムを明らかにすること、第二は、農業金融問題への新たな分析枠組みの導入可能性の検証である。2021年度は、第一の課題である、民間信用調査から、農業金融のミクロ的視点の分析に資する情報の検討を行い、データベースの試行入力を行った。さらに、公的統計による農業経営の財務構造の正確な把握を行った。また、公的普及組織による経営支援のあり方を考察した。21年度はオンラインでの研究会やインタビューを複数回開催し、コロナ禍で実地調査の制限もある中で、本研究の進め方について討議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で研究活動が制限される中、オンラインでの研究会を複数回開催し、本研究の進め方について討議することができており、順調に進んでいるといえる。具体的な進捗は以下のとおりである。 1)農林水産省「農業経営管理ソフト等と連携した調査の効率化に関する勉強会(後に協議会)」にオブザーバー参加し、農業経営者が経営管理上抱える課題や、経営管理ソフト活用時の問題点、経営管理データの活用方策について検討を行なった。 2)農業普及組織による経営支援の取り組みのケーススタディを実施し、自治体、JA、商工会など関連団体の組織化に普及組織が果たす役割を考察した成果を公刊した。また、農林水産省統計部と連携し、生産費調査の調査方法効率化(紙ベースからデジタルベースへの転換)に向けた課題の考察を進めるとともに、フィンランド農業統計部(Luke)におけるデジタルベースでの農業経営統計の分析・調査方法について現地調査の準備を進めた。3)文献サーベイととともに、アンケート調査(2021年2月、農業法人3社対象、有効回答数128件)を実施し、分析を行った。アンケート分析結果は学会発表、論文としてのとりまとめを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、昨年度に引き続き、第一の課題では、民間信用調査から、農業金融のミクロ的視点の分析に資する情報の検討を行い、データベースを構築する。また、構築したデータベースから、農業経営の財務行動及びその成果、と統治のダイナミズムを明らかにしていく。 他方、第二の課題とした、農業金融問題への新たな分析枠組みの導入可能性の検証では、関連文献の収集を含め、中小企業金融での研究動向の把握と農業金融問題への適用可能性について検討する。さらに、農業ファンドを含めた農業金融の近年の動向についても、情報収集を行う。また、海外にも目を向け、EU(特にフィンランド)における農業経営統計に基づく財務構造の分析および調査手法に関する現地調査を進めるとともに、日本における農業経営統計の調査方法効率化の課題について現地調査を進め、国際比較の観点から考察を行う。組織文化に関わる日本農業経営学会主導の書籍編纂の企画があるため、それに参画し書籍論考の執筆を目指す。 引き続き、コロナ禍により、研究活動の制限が継続されるが、オンラインでの研究会やインタビューを積極的に実施し、各研究課題に対して適宜対処する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、当初計画していた現地実態調査を、すべてオンライン調査に切り替えたこと、学会への参加もオンラインでの参加となったことが主な原因である。 次年度は、計画している調査や、研究成果を学会報告や論文投稿など、当初の予定を遂行することを見込んでいる。
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