研究課題/領域番号 |
20K06286
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
堀部 篤 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (60709640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農地市場 / 相続 / 地域計画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に、農地取引の新しい取り組みに着目しつつ、農地取引の諸形態ごとの要因を明らかにし、農地制度の機能と課題を評価すること、第二に、農地制度の形成過程を分析し、実現可能な望ましい農地制度を設計すること、である。具体的には、以下の研究実績を積み上げている。 農地取引の決定要因(貸し手と借り手の社会関係、ほ場条件、賃借料、公的機関の紹介)について、平地農業地域と、中山間地域に分けて、それぞれ先進的な取り組みを行う事例の調査・分析を進めた。平地農業地域については、担い手ごとに担当区域を決めることで、中長期的に効率的な農地利用方法が把握できた。中山間地域については、集落機能・補助金活用・不在地主対策の面から、新しい農地取引の仕組み(農地まるっと中間管理方式)の機能と成果を把握できた。中山間地域については、学会報告、学術雑誌への投稿を進めた。 また、近年の農地市場およびその基盤となる農地政策について、その特質を書籍で発表した。 農地政策の形成過程については、中央政府において主要な要因である官僚制(特に人事制度)の解明を進め、学術雑誌への投稿を行った。 以上の成果について、業界雑誌、関係者への講演を通じて社会貢献を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平地農業地域と中山間地域に分けて、それぞれ先進的な取り組みを行う事例について、農地取引の決定要因(貸し手と借り手の社会関係、ほ場条件、賃借料、区的機関の紹介)の調査・分析を進めている。平地農業地域については、担い手ごとに担当区域を決めることで、中長期的に効率的な農地利用方法が把握できた。取り組みを進められた要因について、主導者、農業委員会、行政の機能から把握している。中山間地域については、集落機能・補助金活用・不在地主対策の面から、新しい農地取引の仕組み(農地まるっと中間管理方式)の機能と成果を把握できた。主導者の役割が大きかったが、他の地域でも進展する可能性があるか把握する必要がある。平地農業地域と中山間地域ともに、基本的には一事例の把握のため、他の地域への普及可能性を分析する必要がある。 2022年に行われた農地制度改正について、その狙いや課題について整理し、発表したが、実際に施行される2023年以降、各地の取り組みを把握する必要がある。 農地政策の形成過程については、農林水産省の人事運用についての研究を進めたが、政策形成過程総体として、首相官邸、財務省、農業団体、政党との関係を解明する重要性が分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
平地農業地域と中山間地域に分けて、それぞれ先進的な取り組みを行う事例について、農地取引の決定要因(貸し手と借り手の社会関係、ほ場条件、賃借料、区的機関の紹介)の調査・分析を進めてきた。今後は、以下のように推進する予定である。 平地農業地域については、担い手ごとに担当区域を決めることで、中長期的に効率的な農地利用方法が把握できた。取り組みを進められた要因について、主導者、農業委員会、行政の機能から検討してきたが、担い手および地権者の意向から分析を進める。各地で地域計画の策定が進められようとしているが、本事例の一般普及可能性が分かる。中山間地域については、集落機能・補助金活用・不在地主対策の面から、新しい農地取引の仕組みの機能と成果を把握できた。中山間地域においては、農地利用は単に農業経営としての意義だけでなく、広く地域資源管理や地域づくりとしての意義が大きい。また当然に、集落や地域活動との関連が強い。そのため、農村RMOを含め、農地政策だけでなく、農村政策の中で位置づけてその機能を分析する必要がある。また、平地農業地域と中山間地域ともに、基本的には一事例の把握のため、他の地域への普及可能性を分析する必要がある。また、直近の動向として、2022年に行われた農地制度改正の影響について、各地の取り組みを把握する。さらに、農地政策の形成過程については、政策形成過程総体として、首相官邸、財務省、農業団体、政党との関係についての解明を行う。 また、実際に農地の受け手となる担い手においては、農地は他の経営資源とともに継承され、その方法は法人経営と家族経営で異なる。そのため、経営主体ごとの課題の析出を行う。 上記について、学会報告、学術雑誌投稿を進めるとともに、社会貢献として、業界紙掲載、講演等も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
いくつかの調査について,調査対象者の都合により,2022年度に実施できなかったため。その分は、2023年度に実施する。
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