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2022 年度 実施状況報告書

水圏生態系における水田からの物質供給とその役割ー水田の新たな多面的機能ー

研究課題

研究課題/領域番号 20K06295
研究機関岐阜大学

研究代表者

平松 研  岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90271014)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード水田の多面的機能 / 物質循環 / 溶存鉄 / 溶存ケイ素 / 付着藻類 / 河川生態系 / 安定同位体比 / アユ
研究実績の概要

位山演習林におけるデータにおいて,針葉樹人工林流域に比べ落葉広葉樹林流域からのSi流出量は年平均値,および出水時のいずれにおいても大きいこと,Feについては両林相環境からの流出量は1~1.5×10-3mg/L程度と極めて小さいことが明らかとなった.両流域ともに流出量がピークに近づくにつれ,Fe濃度は増加した.DOC(溶存有機炭素)濃度も鉄と同様の変動を示しており, DOCが0.5mg/l以上の時にFeの流出が確認された.また,出水時におけるFeの濃度に林相環境の差は確認されなかった.Si濃度は両流域ともに流出量がピークに達するにつれ減少した.
水田では,田面水と排水の鉄濃度が高く,水田排水は河川の10倍程度であり,水田から下流河川に鉄が供給されているものと考えられた.特に6月から7月にかけての供給量が多く,中干しなどの農作業の影響であることが推察された.水田土壌中の鉄濃度は表面水よりも大幅に高く,酸化還元電位の影響が見て取れた.特に水田土壌の酸化還元電位が低くなるほど水田内の溶存鉄濃度が増加した.なお,溶存鉄濃度は深度10cmで顕著に高く河川の6,000倍程度の値を示した.ただし,50cmでは大幅に低下したことより,水田の減水深による浸透水としての溶存鉄の供給量は限定的である.河川中の溶存鉄濃度は下流に行くに従い増加傾向にあり,特に水田の多くなる千疋大橋より下流での増加が大きくなった.
調査期間を通じて表層水のケイ素に関しては水が水田を通過する際に減少傾向が見られ,河川におけるケイ素濃度は下流に進むにつれて明確に減少していることから,水田の影響は小さいことが明らかとなった.
長良川(高鷲-忠節間)における付着藻類量とSiの相関性は高く,付着藻類によるSi消費量と同区間のSi減少量はかなり近い値にあることから,森林からのSi流出は付着藻類量に影響を持っている可能性が示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験水田において機材が壊れ,一部データが収集できなかったなどのトラブルもあるが,水田からの鉄供給のデータやケイ素と河川の付着藻類の関係などの興味深い成果が得られている.また,昨年度に引き続き調査を行っているアユと藻類の安定同位体比に関する成果については投稿準備中となっている.

今後の研究の推進方策

昨年度までの結果によれば,河川水中のケイ素減少量と付着藻類中のケイ素増加量とがかなり近い値になったことから,より詳細にその関係を明らかにする.すなわち,対象流域の河川の付着藻類の一次生産量とケイ素含有量を計測し,流入ケイ素が付着藻類の成長をどの程度規定しているのかを明らかにする.また,付着藻類の変動が水田や森林を含む流域環境とどの程度リンクしているのかを,水田の物質循環データ,森林からの流出データと合わせて調査していく.
また,本研究の課題の一つである脱窒による窒素の動態を,水管理,微生物燃料電池理論,マクロポアの導入などの制御方法とともに検討を加える.中干しなどによる水管理がメタン抑制につながることはよく知られているが,インドネシア独特の稲の植え方がどの程度効果を持つのかを確かめる.また,マクロポアは人工的に作成した浸透性の縦穴であり,酸化還元電位の変動に影響を持つと考えられている.実験とともにHydrusなどのモデルでも検証を進める.
最終年度であるため,水田の多面的機能として,河川への鉄やケイ素などの微量物質の供給源としての役割を明確にし,河川環境や水圏環境が森林管理や水田耕作といった人間活動にどのように依存しているかを示すことを目指す.

次年度使用額が生じた理由

研究開始時期にコロナ禍があり,全体的に計画が後半部分に送られてきたことによるものであり,本年度は最終年度ということで研究を加速させて実施する予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 明治用水頭首工の漏水事故に対する緊急対応2023

    • 著者名/発表者名
      71.乃田啓吾・岡島賢治・千家正照・千原英司・西村眞一・梶川千賀子・酒井俊典・平松研
    • 雑誌名

      水土の知

      巻: 91 ページ: 31-35

    • 査読あり
  • [学会発表] 安定同位体比を用いて見る長良川のアユと藻類の関係2022

    • 著者名/発表者名
      羽田野隼史,高田 誠,大西健夫,西村眞一,平松 研
    • 学会等名
      日本雨水資源化システム学会
  • [学会発表] 林相の異なる森林流域におけるFe,Si の動態2022

    • 著者名/発表者名
      市川聖佳,豊田政幸,千家正照,上村岳斗,大西健夫,平松 研
    • 学会等名
      日本雨水資源化システム学会
  • [学会発表] 安定同位体比を基準とした?良川におけるアユ体組織の更新2022

    • 著者名/発表者名
      羽田野隼史,高田 誠,大西健夫,西村眞一,平松 研
    • 学会等名
      農業農村工学会
  • [学会発表] Evaluation of Changes in Stream Water Chemistry and Flow Path Due to Coniferous Plantation2022

    • 著者名/発表者名
      aketo Uemura, Takeo Onishi, Toshiyuki Ohtsuka, Ken Hiramatsu
    • 学会等名
      AGU meeting, 2022
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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