本年度は、コンクリートと地盤との境界部分で発生する浸透による事故のシミュレーションを行った.令和4年5月に発生した明治用水頭首工の事故で、事故による影響が発生していない地点で、本研究が対象としているコンクリートと地盤との相互作用による浸透と内部の破壊の検討課題が生じた。このテーマは、研究対象がコンクリート心壁を有するダムから頭首工へと変更するが、コンクリートと地盤との相互作用による地盤の安定性という点で共通するテーマであるとして、本年度は頭首工の上流エプロンで行われた暫定止水矢板工が下流のエプロン下部の地盤の破壊に影響を与えるか否かについて、現地観測データと有限要素浸透流解析を比較することで検討した。研究の結果、上流エプロンの暫定止水矢板は下流のエプロン下部の地盤の破壊を抑止する効果が確認できた。また、上流エプロンの暫定止水矢板による浸透流量の抑止効果は、施工後から時間を追うごとに現地観測データと乖離していく傾向があった。これに対して、浸透流解析における上流エプロンの暫定止水矢板下部の透水係数を小さくすることで、乖離幅が小さくなることが分かった。このことは、上流エプロンの暫定止水矢板によって施工後時間を追うごとに浸透抑制効果が大きくなっていることを意味しており、徐々に安全側に向かって安定していることが明らかとなった。一方で、上流エプロンに止水矢板を施工により、下流の水深変化がエプロン下部の水圧変動に与える影響が大きくなることが分かった.
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