研究課題/領域番号 |
20K06297
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
柴田 俊文 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (30342546)
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研究分担者 |
西村 伸一 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (30198501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農業用水路トンネル / 宇宙線ミュー粒子 / 多方向載荷試験 |
研究実績の概要 |
本申請課題では,地盤や構造物を透過した宇宙線ミュー粒子を測定し,このデータを用いて農業用水路トンネルの地山の地質不良区間の密度を推定する.そして,数値解析と模型実験を併用してトンネルと地山の相互挙動を明らかにし,耐震補強工法を再現することで,その効果を検討することを目的とする. 第一に,宇宙線ミュー粒子検出による密度の精度を確認するため,広島県にあるロックフィルダムの監査廊にシンチレータと光電子増倍管で構成された検出装置とサーベイメータを設置し,ミューオンを測定した.なお,このロックフィルダムはコア,フィルタ,ロックのゾーンに分かれており,それぞれのゾーンに対して,既往の密度試験の結果がある.また,ミューオンを測定する際には,上流側と下流側でそれぞれ検出装置の天頂角を0度(鉛直方向に相当)から60度まで10度おきに変化させる.測定した結果から密度を換算し,既往の密度試験の結果と比較することで,精度を確認する. 次に,前年度に引き続き,地山とトンネル覆工をモデルとした載荷実験に対し,剛体バネモデル(RBSM)を用いて数値解析を行う.解析モデルでは地山とトンネル覆工,水平方向から荷重を作用させ,要素分割を変化させて,載荷板変位,内空変位,載荷荷重,モデル全体の変形状況,ひび割れ発生状況などについて実験結果と比較し,背面空洞の影響や適用範囲を明らかにする.また,多方向載荷試験(水平荷重に加え,鉛直荷重を考慮)に対する数値解析も実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
宇宙線ミュー粒子の検出では,広島県にあるロックフィルダム(堤高:49.7m,堤長:250m,堤体積:535千m3,総貯水量:1,308千m3)の監査廊に検出装置を設置し,装置の天頂角を変化させ,上流側と下流側(上流側は湛水を考慮)の両方向に対して実験を行った.天頂角は0度から60度まで10度おきに変化させているため,14パターンの結果が得られており,平均密度,各ゾーンの密度,水位を考慮した密度などの検討を行った.検出されたミューオンの数から密度を換算し,既往の密度と比較した結果,すべてのゾーンの密度を同時に同定することは難しかったが,ダム堤体の平均的な密度を精度良く推定することができた.また,上流側と下流側の結果を比較することで,水の密度を確認することができた.ここで,本来ならば,新たに作製した検出装置を農業用水路トンネルに設置し,計測を始める予定であったが,新型コロナウイルスの影響により検出装置の作製が間に合わず,実験を延期することとなった. 数値解析では,載荷荷重,載荷板変位,鉛直/水平方向内空変位量,ひび割れの発生場所や発生時期について模型実験の結果と比較し,RBSMの数値妥当性を示した.なお模型実験は,96cm×96cm×40cmの地山と馬蹄型トンネル覆工をモデルとした載荷実験であり,背面空洞を考慮している.解析の際には,3パターンの背面空洞について検討を行い,適用範囲を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
ロックフィルダムにおける計測では,堤体の密度を対象にミューオンを測定していたが,物質がない状態での検出精度を確認していなかった.そのため,堤体下部の監査廊での計測を終えた後,地上部にミューオン検出装置を設置し,密度が0の状態で計測を行うこととする.また,新たに深度が深い位置を対象とした検出装置を作製し,農業用水路トンネルに設置して計測を行い,地質不良区間の密度の測定と,密度の分布状況の把握を行う.また,トンネル内での通水時(農繁期)における測定方法の問題点を精査し,検出装置の改良を試みる. 模型実験では,これまでに地質不良区間(及び地質不良区間の境界部)を模擬したケースを想定していなかったため,軸方向に強度の異なる地山を設置して多方向載荷実験を実施する.荷重計,変位計(接触式/非接触式),ひずみゲージ,デジタルビデオカメラなどを用いて,三次元のトンネルの変形性状や地山とトンネル覆工の相互作用を確認する. 数値解析では,多方向載荷実験の結果に対し,RBSMを用いて検証する.Delaunay要素分割への修正を試みた後,鉛直/水平方向載荷荷重,載荷板変位,鉛直/水平方向内空変位量,ひび割れの発生場所や発生時期について確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに作製した検出装置を農業用水路トンネルに設置し,計測を始める予定であったが,新型コロナウイルスの影響により検出装置の作製が間に合わず,実験を延期することとなった.
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