本申請課題では,地盤や構造物を透過した宇宙線ミュー粒子を測定し,このデータを用いて農業用水路トンネルの地山の地質不良区間の密度を推定する.そして,数値解析と模型実験を併用してトンネルと地山の相互挙動を明らかにし,耐震補強工法を再現することで,その効果を検討することを目的とする. 第一に,宇宙線ミュー粒子検出による密度の精度を確認するため,提体が三つのゾーンに分かれているロックフィルダムの監査廊にシンチレータと光電子増倍管で構成された検出装置とサーベイメータを設置し,ミューオンを測定した.ミューオン測定の際には,上流側と下流側でそれぞれ検出装置の天頂角を10度おきに変化させた.測定した結果から密度を換算し,既往の密度試験の結果と比較することで,精度を確認した.また物質がない状態での検出精度を確認するため,地上部にミューオン検出装置を設置し,密度が0の状態で計測を行った.最小二乗法の因子の設定や検出装置の特性の検討,ミューオンの測定範囲の広がりの確認,上流側の水の密度の利用など,多方面から議論を行い,精度の向上を図った.また,農業用水路トンネルの装置で測定を行い,所定の密度が得られることを確認した. 第二に,地山とトンネル覆工をモデルとした載荷実験に対し,剛体ばねモデル(RBSM:Rigid Bodies-Spring Model)を用いて数値解析を行った.解析モデルでは地山とトンネル覆工,水平方向から荷重を作用させ,要素分割を変化させて,載荷板変位,内空変位,載荷荷重,モデル全体の変形状況,ひび割れ発生状況などについて実験結果と比較した.さらに,様々な深度に対する塑性圧の影響を検討する多方向載荷試験に対し,実験結果とRBSMの数値解析結果との比較を行った.
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