研究課題/領域番号 |
20K06298
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
工藤 亮治 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (40600804)
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研究分担者 |
近森 秀高 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (40217229)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンサンブル流況予測 / 水文モデル構築 / パターン認識法 |
研究実績の概要 |
課題1について,寒河江ダム流域に適用したタンクモデルにバイアス補正を施した週間アンサンブル予報を入力することで,5日先までのダム流入量予測を行った.その結果,3日先までであればある程度の精度でダム流入量が予測できることがわかった.また,タンクモデルに予測精度をすでに構築済みの週間アンサンブル予報を導入したNearest Neighbor法(NN法)による予測精度と比較すると,融雪期の予測精度はNN法の方が高いことが明らかになった.水文モデルでは積雪融雪過程のモデル化を行うが,このモデル化に課題があると考えられる.また,岡山県全域を対象に,農業水利用を導入した水循環モデルを構築し主要なダム流入量及び河川流量が再現可能であることを確認した.次年度以降,このモデルに週間アンサンブルを入力することで下流需要を考慮したダム放流支援システムの開発を行う. 課題 2について,全国14のダム流域にタンクモデルを適用し,モデルパラメータの吟味を行った.その際,降水量補正として降水量を一律に割ります方法と降雪量を補正する方法を比較し,流出解析に与える影響を吟味した.その結果,特に豪雪地帯では降雪量を補正することで融雪期後期のダム流入量の過小推定傾向や秋季の過大推定傾向が緩和され,再現精度が向上することがわかった.また,メッシュ平年値を導入すると西日本ではほとんどの流域で降水量の割り増しが不要となった. 課題3について,出水時の過小推定を緩和するため,局所線形近似化法(LL法)を用いてダム流入量予測を行った.その結果,全体的な予測精度はNN法と同等となったものの,高水部ではLL法で予測精度が高くなった.このことから,簡易なパターン認識法によるダム流入量予測支障としてはとしては局所線形近似化法が適していることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岡山県を対象とした水循環モデルの構築にやや時間を要したが,概ね県内の水循環の状況を再現できるモデルの構築が完了した.次年度以降,主要ダムの情報を収集し,現況をより再現できるモデルの構築を行う.
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今後の研究の推進方策 |
課題1について,令和3年度に構築した岡山県の広域水循環モデルに週間アンサンブルを入力し,中長期流況予測システムを構築する.また,その予測精度について吟味する.
課題2について,令和2年度に実施した降雨の空間的集中度とモデルパラメータの検討を拡張し,降雨の空間的集中度の違いが集中型,分布型それぞれの流出モデルのパラメータに与える影響を吟味する. また,タンクモデルパラメータについて,全国14ダムのほとんどで菅原の標準パラメータにより流況を再現できることを確認したが,第四紀火山帯などでは再現性が低下した.こうした浸透性の強い流域におけるパラメータについて吟味する.
課題3について,メソアンサンブルを用いた洪水時のダム流入量予測を行う.手法としてはLL法や他の学習法の利用を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによりほとんどの学会がオンライン開催または中止となり,また予定していた現地調査や打ち合わせがほとんど実施できなかったため. 今年度の週間アンサンブルやメソアンサンブル予報の受信料として使用する予定である.
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