研究課題/領域番号 |
20K06301
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
高瀬 恵次 石川県立大学, 生物資源環境学部, 客員教授 (90133165)
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研究分担者 |
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
佐藤 嘉展 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90414036)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 積雪・融雪 / 気候変動 / 適応策 / 森林水文 / 水資源 |
研究実績の概要 |
温暖化によって森林流域の積雪量が減少し、加えて融雪時期も早まることで春先の水資源が不足すると予想されている。このため、春先の渇水の被害を最小とするための対策を確立することは、水資源管理にとって極めて重要な課題である。日本では国土面積の約7割を森林が占めるため、森林管理によって流域内の積雪を少しでも緩やかに融雪させる(以下、「貯雪・融雪遅延機能」)ことができれば、春先の水資源確保として有効な手段となり得る。本研究では、森林内のギャップ、列状間伐などによる林内開空地と均一な森林内での積雪・融雪過程の違いに着目し、どの様に森林施業すれば貯雪・融雪遅延機能が高まるのか、森林施業によって水が多く必要な代かき期の河川流量をどのくらい増やせるのかを調べる。これにより、森林施業が温暖化による積雪減少に対する適応策となり得るのかを解明する。 今年度は、森林内外における消雪日の差が何によって説明されるのかといった森林と雪との関係について理解することは、森林の貯雪・融雪遅延機能を評価するための基本的な知見となることから、林内と林外の消雪日を観測した論文・資料を収集して、プラス(マイナス)であれば林内(林外)の積雪の方が長く残ることを表す、消雪日の差(ΔSDD;Difference in snow disappearance date)を決める要因をメタ解析によって分析した。その結果、ΔSDDは、0 ~+10日に多く分布しており、平均は+6日であった。また、ΔSDDと冬期平均気温に負の相関が見られた。全球スケールのΔSDDと冬期平均気温との関係とわが国におけるその関係を比較したところ、日本はΔSDDがプラスにもマイナスにもなり得る気候帯であった。また、全球スケールの同じ気温帯と比較すると、森林の貯雪・融雪遅延機能は比較的発揮されているが、将来的には貯雪・融雪遅延機能は低下する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森林内外の積雪・融雪観測に加えて、過去の研究論文・資料を活用したメタ解析を行うことによって、上記の通り研究計画に沿って研究を行うことができた。また、新型コロナウイルスによる対面での研究打ち合わせ、学会発表などへの影響は大きかったが、研究の遂行に関する影響は最小限に抑えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は均一な森林内だけでなく、ギャップや列状間伐などによる不均一な森林内における積雪・融雪観測を行い、こうした不均一な森林内における積雪・融雪過程を再現できる次世代型の積雪・融雪モデルを構築する。さらに、このモデルを活用して、どの様に森林施業すれば貯雪・融雪遅延機能が高まり、春先の水資源を有効利用でき、温暖化による積雪減少に対する適応策となり得るのかを解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
観測機器(センサー、データロガーなど)の更新を予定していたが、耐用年数を過ぎても安定したデータが得られていることから、観測機器の新規購入を見送った。また、新型コロナウイルスの影響によって学会発表がオンラインでの開催となった。これらの理由から次年度使用額が生じた。 次年度、見送ったセンターやデータロガーの新規購入を行う。これによって様々な森林内における積雪・融雪観測を行う。
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