本研究は、農業集落排水施設に併設される小規模なメタン発酵施設向けのバイオガス中の硫化水素の除去技術の開発に向けて,活性汚泥による硫化水素の分解・除去能力を明らかにすることを目的とした。 令和3年度までの研究でバイオガス中の硫化水素は水や活性汚泥に接触させると,水や活性汚泥に溶解して気相中の濃度が低下することを確認したが,水や活性汚泥に溶解した硫化水素のモニタリングが困難であった。当初の計画では,特定悪臭物質測定マニュアル(日本環境衛生センター)「2.2.6排出水中における濃度の測定」に基づいた測定を専門分析会社へ発注を予定していたが,沖縄本島内に対応できる分析会社がなかった。このため,令和3年度後半から「2.2.6排出水中における濃度の測定」に代わる分析を探索した。専門分析会社のアドバイスを受けて,溶存硫化物用の検知管による測定を実施したが,小規模な室内実験において水または汚泥に溶解した硫化水素の量は,極めて少量で測定が困難であった。 令和4年度は,令和3年度に引き続き,水または汚泥に溶解後の硫化水素のモニタリング方法の検討を継続することとして,バイオガスの水や活性汚泥への接触実験の方法の改良を検討した。これまで,バイオガスを水(活性汚泥)に接触後,回収・分析可能なのはバイオガス又は水(活性汚泥)のいずれかであったが。回収操作を工夫して,両者の回収・分析を可能とした。また,水(活性汚泥)に溶解した硫化水素のモニタリングに分光光度計(HACH社DR900)方法8131及びヘドロテック-s(ガステック社)を用いた。これらによって,水(活性汚泥)に溶解した硫化水素のモニタリングが可能になったが,気相で濃度低下した硫化水素の量に対して,モニタリングできた水に溶解した硫化水素は約3割にとどまった。さらに汚泥に接触させた場合,モニタリングできた硫化水素は3%程度であった。
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