研究実績の概要 |
本研究では,コマツナ根が高濃度塩水に順化・機能分化する一連の過程において,hydraulic lift によって,乾燥域に水や塩がどのように運ばれるか,また,順化から機能分化に至る過程で根にどのような変化が起きているかを解明した.20年度には,塩水処理区において根は与えられた塩水をそのままの濃度で吸水せず,hydraulic liftで再配分される塩が制限されたこと,および,塩水処理区の根は対照区に比べより多くの水を培地に供給したことを明らかにした.21年度には,塩水3%区における中層の含水率およびNa濃度は,対照区に比べて有意に高いことを明らかにした.すなわち,塩水への馴化過程においてNaが加わることで培地の水ポテンシャルが低下し植物根によるhydraulic liftが起きやすい環境に変化した.最終年度には,塩水3%区の中層において,含水率が高く新鮮な根の周囲の培地含水率が高いことが明らかになり,新鮮な根のhydraulic liftによって培地に水が再配分されることが確認された.最終年度には,塩水湛水栽培開始からの培地表面における根の変化を画像で記録し,同時に培地における根量と含水率の2次元分布を取得した.塩水湛水処理の経過とともに,真水で湛水された対照区は根の増加が見られたが,塩水区では根が減少した.また,塩水処理後において,根の分布は処理区と対照区に差異はないが,含水率の分布は毛管上昇しにくい中層以上で試料による差異が見られた.一方,根と培地含水率の2次元分布には対応関係が認められなかったが,根含水率と培地含水率の2次元分布には対応関係が見られた.それにより,含水率の高い根は新鮮で生存していると推察され,塩水区では塩水湛水栽培後に生存した根がhydraulic Liftにより周囲の培地に水を供給していると考えられた.
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