研究課題/領域番号 |
20K06313
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオ炭 / 電気炉 / 炭化物 / 均一性 |
研究実績の概要 |
家畜排せつ物堆肥化時の悪臭抑制は重要な課題であり,これまでに脱臭装置の開発・改良や材料への対策などが検討されてきた。バイオ炭には物質吸着による脱臭機能が期待されるが,その材料や炭化の方法が多々であることもあり,これらによる脱臭・防臭の機能の違いについては不明である。本研究は,このバイオ炭を堆肥材料に混合することによる悪臭抑制について検討することを目的としており,2020年度は初年度として実験室におけるバイオ炭試料の調整に関する基礎データの取得に重点をおいた。 実験室規模でのバイオ炭の製造法としては,汎用電気炉内に材料を入れた複数の匣鉢を設置する方法がある。炭化時の炉内温度と試料温度の関係性や匣鉢内や匣鉢間の試料性状の均一さについて把握する必要があるため,先ずその検討を行った。また,炭化温度と時間を変えた複数のバイオ炭を作製し,それらの性状を比較して当該装置における炭化条件が得られる炭化物の性状に及ぼす影響について検討を行った。 電気炉の温度センサが設定温度に到達し昇温を停止したとき,計測した温度は設定温度を下回っており,その後に上昇を続けて設定温度に到達するまでに30分から1時間を要した。よって,炭化時間を1時間以下に設定した場合,期待する温度条件での炭化が行われない可能性があることがわかった。同時に炭化操作を行った4つの匣鉢内の試料の中央部と外縁部の灰分は,300 ℃と450 ℃では有意差が生じた事例があったが,匣鉢間の比較では有意差はみられず,このため,各温度の4つの匣鉢の炭化物を比較すると,炭化温度間には有意差が確認された。このため本研究では,同時に炭化を行った匣鉢4つの試料は同一とみなすこととした。カラマツ材おが粉では,炭化温度が高くなると炭化物の収率は低下するが,炭素含有率が高く,pHが酸性から微アルカリ性の試料が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から第2年度にかけては,バイオ炭の悪臭物質吸着能の評価について研究を行うこととなっており,悪臭物質吸着能については低級脂肪酸の水溶液を用いた検討を行うこととしている。これらのためには試料炭の調整と低級脂肪酸の定量とが必要になる。試料炭の調整は申請者が所有している既存の電気炉等を用いた装置により行うため,「研究実績の概要」にて述べたように基礎的データの取得が完了し,作成した試料炭も複数が存在する。その一方の低級脂肪酸の定量については,購入予定としていたガスクロマトグラフと採択金額との調整の関係から納入と動作確認までは進行したものの,実際の試料液の測定にはいたらなかった。当初計画では第2年度にバイオ炭による悪臭物質の吸着試験に進むこととなっている。測定に先立ち,ガスクロマトグラフの調整と測定条件の検討が進めば,吸着実験に着手できることから,進捗状況の区分を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,バイオ炭の悪臭物質吸着能の評価について研究を行う。年度前半にはガスクロマトグラフの調整と測定条件の検討を完了させ,同後半には悪臭成分の吸着試験に移行する。吸着試験では,悪臭成分とされる低級脂肪酸類の水溶液に,材料や炭化温度の異なるバイオ炭を加えて,その前後の水溶液中の低級脂肪酸を定量することにより吸着能を評価する。この試験を行うことにより,どのようなバイオ炭が悪臭成分の吸着に適するかを検討し,必要に応じて新たなバイオ炭を作成てさらなる検討を行う。 また第3年度以降については,小容積実験装置による堆肥化実験によりバイオ炭の混合による堆肥化時の悪臭低減効果を検討するため,このための装置の調整と実験方法の改良等を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はバイオ炭試料の作成条件についての検討を主に行い,臭気物質の吸着性の検討については未実施である。予算上の制約があり,測定に不可欠なガスクロマトグラフの整備が完了しなかった。残額と2021年度の予算により不足部分を整備し,研究を進展させる予定である。
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