2023年度の研究では、前年度までに得られた人工光下での知見を太陽光利用型のビニール温室で活用することを目的とした。研究対象は茨城大学農学部阿見キャンパスのビニール温室で栽培されたイチゴ「すずあかね」である。3次元データは2023年6月13日から10月25日までの期間、LiDARを搭載したiPhone 14 Proと3次元スキャナーアプリScaniverseを用いて収集した。加えて、6月、8月、10月に破壊調査を行い、葉数、実葉面積、地上部および地下部の乾物重量を測定した。 収集した3次元データは点群編集ソフト(CloudCompare ver. 2.6.3)を使用し、植物群落のみの3次元点群を抽出した。解析項目としてイチゴ群落の草高と曲率を用い、これにより草勢や群落の密度を評価した。結果として、3次元計測技術はイチゴ群落の詳細なモニタリングと葉面積の推定に一定の効果があることが確認された。特に高温期における植物の生育変化を定量的に捉えることができた。 さらに、得られた3次元データから従来の2次元画像や破壊調査では得られない情報を得ることができた。また、破壊調査から得られた実葉面積や乾物重量のデータと比較することで、高温期におけるイチゴの草勢と生育の変化を定量的に評価した。 今後の課題としては、3次元データの取得と処理の自動化が挙げられる。これにより、農業生産現場での実用性と効率性が向上することが期待される。 この研究の結果から、3次元計測技術は農業における作物の精密なモニタリングや生育管理に有効であることが示された。特に、イチゴ群落の密度や葉の丸まりに関する情報を2次元情報では観測できない形で得ることができた。今後の研究により、3次元計測技術をさらに発展させることで、農業生産性の向上に貢献することが期待される。
|