研究課題/領域番号 |
20K06322
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江口 壽彦 九州大学, 実験生物環境制御センター, 准教授 (40213540)
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研究分担者 |
田中 宏幸 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (30253470)
尾崎 行生 九州大学, 農学研究院, 教授 (60253514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光環境制御 / 薬用植物 / 生産性 / 休眠 |
研究実績の概要 |
【カラスビシャク栽培の至適光条件の解明】昨年度の実験で,生薬原料であるカラスビシャク球茎の肥大が青色光照射下で最大となり,球茎での有用成分(アラバン)の単位乾物あたりの含量が緑色光照射下で最大となったことから,光条件を調節可能なLEDパネルを用いて,気温25°C,相対湿度70%条件に制御した環境で,同一光強度の青色(100%),緑色(100%),および青色と緑色の混合光(50:50)下でカラスビシャクを栽培し,光質の影響を調査した.その結果,有意差はみられなかったが,昨年度の実験と同様に球茎の肥大は青色光下で栽培したもので促進され,球茎に含まれる有用成分の含量は緑色光下で栽培したもので高まり,混合光下では両光条件(青および緑色光の単独照射)の中間の値を示す傾向が認められた. 【カラスビシャクの休眠について】カラスビシャクの遺伝的変異とは異なるが,育種を進める上で障害となりうる球茎の休眠について調査を行った.カラスビシャク塊茎の出芽が安定しないことが示唆されており,球茎が低温あるいは高温に遭遇することと関係があるのではないかと考え,球茎に長期間(300日)あるいは短期間(40時間)の低温(2℃,暗黒)処理,あるいは短期間(40時間)の高温(40℃,暗黒)処理を行って,その後の発芽に影響があるかを調査した.本試験においては,長期間の低温処理,短期間の低温処理,短期間の高温処理のいずれもにおいてもほぼ全ての球茎が発芽した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,その球茎が生薬”ハンゲ”として利用される日本自生の薬用植物カラスビシャクを対象として,植物の生産性や物質蓄積には光条件が大きく影響することに着目し,2つの課題,すなわち,1)光条件に重きを置いて,カラスビシャクの効率的生産のための至適栽培条件の探索を行い,また育種を進めるために2)球茎の休眠に対する温度の影響を明らかにすることを目的として設定した. 研究2年目の令和3年度において,課題1)については,令和2年度に示唆された,青色の単色光が球茎の肥大を促進すること,および緑色の単色光が球茎の有用成分含量を高めることを確認し,両色光を半々で混合して照射した場合には,青色光単独照射よりも球茎肥大は小さく緑色単独照射よりも肥大は大きいこと,および青色光単独照射よりも球茎における有用物質濃度は高く緑色単独照射よりも濃度は低いこと,すなわち,混合光照射下では青,緑の各光色単独照射をした場合の中間的な肥大蓄積状況を示すこと.課題2)について,長期間の低温処理,短期間の低温処理および短期間の高温処理のいずれもが球茎の休眠に影響が見られなかった. 以上のように,本研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,おおむね順調に進展しており,これまでに得た知見に基づきつつ,当初に設定した2つの課題どおり,1)カラスビシャクの効率的生産のための至適な光条件の探索を行い,また2)効率的な育種に必要な萌芽,開花・結実に必要な環境条件を明らかにする. まず,課題1)に関することとして,カラスビシャクの至適光条件の探索を行なう.特に,先に得られた知見に基づいて球茎肥大を促進する青色光に球茎有用成分含量を高める緑色光を補光する栽培実験を行なう. また,課題2)に関することとして,本種の育種系構築に必要な萌芽,開花・結実に必要な環境条件の調査を行ない,あわせて日本に自生する遺伝子源の収集も試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関からのコロナ禍による対面会議等の自粛要請に従い,本研究課題に関わる国内旅費に補助金を使用しなかった.このため生じた次年度使用額88,354円は主として研究代表者の物品費として使用する予定である. 令和4年度の研究費円の使用計画は【物品費:388,354円】1)生薬としての品質評価のための経費,2)材料植物育成・生育実験のための園芸資材,3)化学分析・遺伝子発現解析等に必要な器具・試薬,4)健全な植物育成に必要な肥料・殺虫剤等の農薬,5)データの整理・処理・保存のためのコンピュータ用消耗品,8)その他.【旅費:15万円】1)情報交換や研究成果の公表のための国内旅費.【その他:65万円】1)学術誌等への成果発表,2)材料準備・栽培実験の場となる環境制御施設の利用料金.に用いる.
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