研究課題/領域番号 |
20K06323
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
光岡 宗司 琉球大学, 農学部, 准教授 (60437770)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農業機械の作業情報 / 複数時系列データ / 特徴量抽出 / 機械学習 / 作業状態の分類 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、熟練作業者に蓄積される機械作業における操作、作業状況の良否判断等の経験知・暗黙知のデータ化とスマート農業への有効利用を図るため、「実作業環境下において農業機械から計測される時系列データから作業状態・精度の把握および作業者の運転・操作パターンの特徴抽出とその数値化」を行うことである。 一般的に熟練作業者ほど圃場の土壌や作物の状態、機械から伝わる振動・騒音および作業の仕上がり具合などの情報から作業状態を総合的に判断して操作を行っており、経験年数・習熟度の違いがエンジン回転数や走行速度、作業機の制御にどのような差異が生じるのか、熟練作業者はどのような作業情報から作業状態の良否を判断してるのかを明らかにする必要がある。 昨年度は農業機械の作業情報を把握するための計測システムの開発と実作業データの計測を行い、得られたデータより作業状態の把握に重要な計測項目を検討した。その結果、機体の剛性が高い部位に設置した慣性センサー(3軸並進加速度および回転角速度)から得られる時系列データが最も機械の稼働状態を把握する上で有用であった。 そこで、本年度はトラクタのロータリ耕うん作業を対象に、異なるトラクタの作業条件および圃場条件での機体の振動時系列データを用いた機械学習により、設定した作業・圃場条件の分類を試みた。 その結果、機体側と作業機側の2ヵ所の慣性データを用いることで、異なる土壌条件とトラクタの操作条件を組み合わせた16パターンの作業条件を、95.5 %の精度で判別することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、比較的計測が容易で機械の状態や作業情報が測定データに反映されるとの予測の基で振動時系列情報のみから作業特徴量を抽出し,熟練作業者の経験値を数値化することを最終的な目標に,振動時系列データに基づく作業状態の違いの把握に寄与する特徴量の抽出および機械学習による作業条件の分類を試みた。 実験では、トラクタの座席下の剛性フレームおよびロータリ上部のフレームに取り付け,サンプリング周波数200Hzで3軸の並進加速度および角速度を計測した。トラクタの操作条件はエンジン回転数を2400 rpmと固定し,PTO回転数を551 rpmと967 rpmの2つとし,土壌条件は含水率を10.2 %,11.9 %,13.2 %,16.2 %の4種類,耕うん回転は1回耕と2回耕とし,同一経路を耕うんした。以上の条件を組み合わせ計16条件により実験を行った。 異なる土壌条件とトラクタの操作条件を組み合わせることで16パターンの作業条件下におけるロータリ耕うん時の機体および作業機の振動時系列の計測を行った。さらに,計測された振動データから特徴量を抽出し,機械学習により16パターンの異なる作業条件の判別を行った。 分類学習では,教師データ数を確保するため,一つの耕うん条件における加速度時系列データを7つの部分時系列に分け,それぞれの部分時系列について特徴量抽出を行った。特徴量としては,平均値,中央値,総和値,最大値,標準偏差および時系列のスペクトルの平均周波数,2次の自己回帰モデルの自己回帰係数を採用した。k近傍法,決定木,線形判別分析,サポートベクターマシン,アンサンブル学習の5つの分類学習器を用いて精度を比較した。 機体側のセンサのみの場合,作業機のみ場合および両方のデータ採用した場合における分類学習を行った結果、両方データを用いた分類精度は,最高で95.5%であった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度はトラクタのロータリ耕うん作業を対象に作業状態の把握な特徴量の抽出と作業条件の分類を行ったが、次年度ではトラクタのけん引作業や収穫機械等の他の作業、機械への計測を実施する。 特に、新しい所属機関である琉球大学が位置する沖縄県ではサトウキビが主要な作物であることから、サトウキビ生産に関わる農業機械および作業を対象として作業状態・精度の把握および作業者の運転・操作パターンの特徴抽出とその数値化を目指す。
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