研究課題/領域番号 |
20K06328
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
佐野 元昭 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (90206003)
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研究分担者 |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 教授 (80257427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物の水ストレス / 葉の固有振動数 / Webカメラ / 深層学習 / 最適灌水制御 |
研究実績の概要 |
植物の水ストレスの推定法として、我々は葉の固有振動に着目しており、小松菜において、①固有振動数は日周変化をすること、②それは日中増加し夜間減少すること、③水ストレスを受けると日中の固有振動数が減少することをこれまで示してきた。 また我々は、減衰振動させた葉をWebカメラで撮影し、相関追尾により振動を計測しているが、この場合、追尾の特徴点が必要なため自動化が困難であった。そこで、画像を矩形領域に分割し、各領域の明暗変化から、葉の減衰振動を調べる方法を提案したが、どの矩形領域の減衰振動を採用すべきか判定する必要があった。そこで本研究では、その判定に深層学習を用い、また葉の映像から直接的に葉のしおれが学習できないか検討した。 そのため、深層学習専用のPC(DeepLearning BOXⅡ Win)を購入し、開発環境としてNeural Network Consoleを導入した。そしてインターネットで集めた様々なトマトの葉の画像を用いて、CNN(Convolutional Neural Network)を用いて深層学習を行った。CNNの構成は、畳み込み層2層、プーリング層1層、全結合層2層とし、活性化関数はReLU、出力はSoftMax関数、最適化アルゴリズムはAdagrad、学習係数は0.01、学習回数100回、損失関数は交差エントロピー誤差とした。そしてこれを、140枚のトマトの葉のデータのうち2/3を教師データとして、残り1/3で評価したところ、しおれた葉と健全な葉を、精度93.75%で判別できた。 また、上述の矩形領域の明暗の減衰波形の判定として、一次元CNN(畳み込み層とプーリング層を4セット、全結合層を1層)を4,600個の減衰波形データのうち半数の波形を教師データとして学習し、残り半分のデータで学習結果を評価したところ、こちらも、精度97.91%で減衰振動波形を判別できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の感染防止対策に伴い、大学研究室での研究活動は大きく制限されており、深層学習に使用する植物(小松菜)を育成するには至らなかった。しかしこの育成は今までも行っていたものであり、すぐに準備可能である。 また、深層学習専用のPC(DeepLearning BOXⅡ Win)を予定通り購入し、深層学習プログラムの開発環境も整えることができた。さらに、深層学習用のニューラルネットワークを構築する上で強力なツールであるNeural Network Consoleの導入を行い、その操作の確認を行った。すなわち、試験的にCNNを構成して、実際の葉の画像や、減衰波形の判定について深層学習を行い、その評価を行ってみたところ、かなり良好な結果を得ることができた。 よって、研究の進捗としては、概ね予定通りと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CNNを用いて葉のしおれを深層学習させたところ、良好な結果が得られたが、深層学習としては、まだデータ数が足りないと思われる。そこでさらに学習用の葉の画像の枚数を増やし、より充実した教師データを準備する予定である。 また、CNNの構成、すなわち、畳み込み層やプーリング層の層数、全結合層の層数、活性化関数や出力関数の選定、学習の際の最適化アルゴリズムや学習係数の設定、学習回数、損失関数(誤差の評価方法)の設定は、試験的に行ったものであるので、より適したニューラルネットワークを構築するために、設定を絞り込んで行く予定である。 さらに、減衰波形の判定については、今回は波形を1次元図形とみなしてCNNを用いて深層学習を行ったが、本来、減衰波形は時系列データであるので、時系列データの解析に適したRNNを用いて深層学習させることも検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、研究補助員による研究活動を極力減らし、専ら、研究代表者が深層学習プログラムの準備を行っていたため、人件費の使用が、予定より大幅に減少した。そこで、その分の人件費を次年度に繰り越し、2020年度にあまりできなかった研究補助員による活動を充実させる予定である。
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