研究課題/領域番号 |
20K06332
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中山 信 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (40445846)
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研究分担者 |
木村 竜士 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (90571810)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビニールハウス / 気温 / 飽差 / システム同定 / モデル予測制御 |
研究実績の概要 |
研究2年目では、ハウス環境データの実測値(2020年12月のデータ)からシステム同定法の中でも、部分空間法(N4SID法)を用いて、4入力2出力(入力:ハウス外飽差・ハウス外気温・ハウス内日射量・窓開度、出力:ハウス内飽差・ハウス内気温)モデルを作成した。ハウス内外の平均的な[気温差,飽差値差]が,[5℃,20g/m3]と[15℃,30g/m3]となる晴れた2日間のデータから、2つのモデルを作成して比較すると、気温差が大きい日のモデルはハウス内気温の変動パターンをよく再現しており、飽差値差が大きい日のモデルはハウス内飽差の変動パターンをよく再現していた。作成した2つの日のモデルを用いて、2つのモデル予測制御器のシミュレーション評価を行った。どちらの制御器も、ハウス内気温は目標値27℃を追従できており、ハウス内飽差は上限値6g/m3内で目標値4.5g/m3に近づく制御ができていた。これより、ある日のモデルでモデル予測制御器を作成し、環境条件の異なる日に実装運用したとしても、モデル予測制御の効果は損なわれないことが分かった。これらの結果は「高知高専学術紀要、67,25-34,2022年」に論文として掲載された。また、モデル作成時の設定次数がモデル精度に与える影響を調べ、PID制御を行った際のシミュレーション評価結果を「電気・電子・情報関係学会四国支部連合大会,8-1, 2021年9月25日」で発表した。2021年度の研究において、本手法によるハウスのモデル予測制御は、実用上問題なく効果を発揮できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書において示した、二年目以降の計画は以下である。 「2.モデル予測制御の有効性(2021年度~2022年度):窓開度センサ・温湿度照度センサらをArduinoに接続し、モデル予測制御をArduino with Matlab/Simulinkに実装させてビニール巻上式窓モータを動かすことで、本研究の有効性を明らかにする。また、2020年度に明らかにされたモデルの運用条件により、季節や天気の変化に対応した、長期使用可能なモデル予測制御を実証する。」 2021年度は上記計画をおおむね実施できたと考える。本実験環境の100m2程度のハウスにおいて、冬期の晴れの日に1度モデル予測制御器を作成すれば、別の晴れの日でも問題なくモデル予測制御の効果を発揮できることがシミュレーションで証明できた。モデル予測制御器をArduino with Matlab/Simulinkに実装させてビニール巻上式窓モータを動かすプログラムは作成したが、コロナによる学校閉鎖もあり、実装開発が遅れ、冬期の実験にあと少し間に合わなかった。しかし、仮に本実験ハウスで制御実験を行ったとしても、シミュレーションと同様の結果になると考えられた。比較実験の必要性から、高知高専の敷地に1坪ハウスを2棟設置して、同じ環境下でPID制御とモデル予測制御が行える実験環境を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究において、本手法によるハウスのモデル予測制御は、実用上問題なく効果を発揮できることが分かった。しかし、PID制御器を利用したとしても、温度制御と飽差制御をうまく切り替えることで、モデル予測制御に近い効果を発揮できることが示唆された。「窓開閉による気温制御や飽差制御は難しい」と農家に思わせる原因は、ハウス物理モデルの複雑さではなく、むしろ汎用窓開閉器による「1℃上昇すると10%開」「気温変化に応じて窓開度を微調整」という大雑把なPD制御方式により、気温制御自体が上手く目標値に追従しない経験からくるものと推察される。 今後の研究では、100m2程度の実験用ハウスから、1000m2程度の篤農家のハウスに実験場所を移し、今回と同様の環境計測を実施する。そして、モデル作成から制御シミュレーションを行うことで、ハウスのサイズに関わらず、同様の効果が得られるか、より実践的な検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に購入予定だった電子機器類が手に入らなかった。2022年度においては、同等の電子機器類を購入する計画である。
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