研究実績の概要 |
最終年度では,ボイラーが稼働する冬期のビニールハウス施設において,日中の窓開度によるモデル予測制御器の向上を図るため,長期で運用可能な飽差気温モデルの作成に取り組んだ.システム同定法(部分空間法)により,冬期1カ月間程度のハウス内外の環境データを活用し,日中8:00~16:00のモデル出力値の精度を上げることを目的とした.モデル作成期間を選択することで,「①夜間日中モデル」「②日中モデル」「③日中天気別モデル」の3モデルを作成し,各モデルを評価期間で運用した.その結果,評価期間のRMSE(二乗平均平方根誤差)の平均値は,飽差が0.53~0.63 g/m3,気温が1.1~1.6 ℃の精度となった.モデル予測制御器は,現在の実測値とモデル出力値との差を考慮しつつ,予測値を時々刻々と修正しながら制御を行うため,本手法によるモデル作成は,冬期の窓開閉によるモデル予測制御器に使用される予測モデルとして,十分な精度であることが分かった.これらの結果は「高知高専学術紀要、68,35-44,2023年」に論文として掲載された. 研究期間全体を通じて,面積100 m2程度の小型ハウスにおいて,4入力2出力(入力:ハウス外飽差・ハウス外気温・ハウス内照度・窓開度、出力:ハウス内飽差・ハウス内気温)モデルを作成・評価し,モデル予測制御の性能を確認した.その結果,ハウス内飽差を最大値6 g/m3以下に抑えつつも目標値4.5 g/m3に近づけつつ,ハウス内気温を目標値27 ℃にする制御が,既設の天窓自動窓開閉器に本モデル予測制御器を導入することにより実現可能であることを示した.
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