研究課題/領域番号 |
20K06334
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
古井 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (70391191)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / 昆虫組織 / DNA抽出法 |
研究実績の概要 |
先年度に引き続き、ノシメマダラメイガ組織からの効率的なミトコンドリア(mt)DNAの単離方法を検討した。先年度は、ヒメアカカツオブシムシ幼虫を用いて幼虫の摩砕条件を緩やかに行ったところ約4倍量のmt DNAを含むことが確認された。しかし、抽出条件の工夫・検討ではこれ以上の改良は困難であると判断し、DNA抽出時に純度にバラツキが生じても精製可能な手段を考えた。検討にあたり、DNA抽出時に回収されるTotal DNAは核由来のゲノムDNAと、細胞小器官由来のDNAに大別されることに着目し、ノシメマダラメイガ成虫からTotal DNAを抽出後、さらに電気泳動による分離とmtDNAを含む画分の回収を試みた。なお、電気泳動は大がかりな機器、時間、技術が必要なパルスフィールド電気泳動は避け、泳動距離が5cmの通常のアガロースゲルを選択した。具体的には、ノシメマダラメイガ成虫から摩砕を緩やかに行って市販のキットでTotal DNAを抽出し、0.5%のアガロースゲル電気泳動に供した。泳動は、分離度の向上を目的として選択可能な100 Vおよび50 Vのうち、50 Vを選択した。ゲノムDNA用のマーカーと共に泳動したところ、ノシメマダラメイガのゲノムDNAは約21.1 kbpでバンドを形成し、バンドからゲルの下方にかけて薄いスメアなバンドが得られた。そこで、20-30kbp、10-20 kbp、7-10 kbpの位置でアガロースゲルをそれぞれ切り出し、市販のアガロースゲルからのDNA抽出キットを用いて精製後、各画分から同量の溶出液をリアルタイムPCRに供した。その結果、バンドがない画分である10-20 kbpにおいて多量のゲノムDNAを含む20-30kbpの画分とほぼ同等のCt値が得られ、DNA量あたりのmt DNAが多く、高純度であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界各地のノシメマダラメイガを採集する課題については、コロナウイルスによる影響で全世界的に混乱が続いており、今年度も実施が不可能な状況であった。ノシメマダラメイガ組織からの効率的なミトコンドリアDNAの単離方法開発については、研究実績の概要に記載した通り、スケールアップも容易な手法が開発されつつあり、概ね順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
世界各地のノシメマダラメイガを採集し、研究用の試料を入手する課題については、コロナウイルスによる影響で現在も見通しが立たない状況にある。世界各国の感染状況を踏まえ、引き続き入手に努力したい。仮に入手できた場合においても、飼育が時間的に間に合わず、次世代シーケンサに供するためのDNA量の確保は困難である可能性もあるため、cytochrome c oxidase subunit I(COI)等の一部配列に絞って解読し、比較することも考えている。また、次善の策として国内の各地でノシメマダラメイガを採集することを検討したい。 ノシメマダラメイガ組織からの効率的なmtDNAの単離方法については、より低濃度で良好な分離が期待できるアガロースゲルの入手が今般の流通の混乱により遅れているので、これを試みることでより安価で簡易な大量調製が可能な高純度mtDNA単離手法の開発を終えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界各地のノシメマダラメイガを採集する課題について、コロナウイルスによる影響で全世界的に混乱が続いており、今年度は実施が不可能な状況であったため、次年度使用額が生じた。当該助成金については、次年度に同課題での繰り越し使用を予定している。
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