研究課題/領域番号 |
20K06341
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
神 勝紀 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (40215166)
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研究分担者 |
今井 裕理子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90882267)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 柿皮 / エビ殻 / 家禽用飼料 / 未利用資源 / 鶏卵の細菌汚染 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画に従って「柿皮+エビ殻飼料を摂取した採卵鶏が生産した卵の細菌汚染度」を調査した。さらに前年度の研究結果から,柿皮給与時の産卵成績低下は柿皮タンニンに起因すると推察されたため,柿皮の脱渋(タンニンの不溶化)方法についても併せて検討した。 1)柿皮+エビ殻飼料を摂取した採卵鶏の卵の細菌汚染度 柿皮を段階的に添加した飼料を採卵鶏に給与して,産卵された卵を回収した。産卵当日および産卵2,4,6週間後に卵殻表面と卵内について,一般細菌,大腸菌群および腸内細菌科菌群のCFUを指標として細菌汚染度を評価した。その結果,卵殻表面の細菌汚染度は卵によって大きく異なるため有意差は得られなかったが,柿皮の飼料添加によって増える傾向にあった。結果を解析するための十分なデータは得られていないが,柿皮を給与すると卵殻表面への排泄物の付着量が多くなる傾向が見られている。卵内の細菌汚染度はいずれの区も極めて低かった。 2)柿皮タンニンの不溶化法に関する検討 実験1:柿皮をエタノール,二酸化炭素,冷蔵(8℃),冷凍(-21℃),55℃加熱および80℃加熱の6つの処理法で処理し,可溶性タンニン含量を測定した。柿皮の可溶性タンニン含量はエタノール区と冷蔵区で減少し,冷凍区と80℃加熱区で増加したことから,エタノール処理と冷蔵処理が有効と判断した。 実験2:柿皮無添加飼料(陽性対照区),無処理柿皮添加飼料(陰性対照区)および実験1で有効と判断されたエタノールおよび冷蔵処理柿皮を6%および8%添加した飼料(試験区)を作製し,人工消化試験によって乾物消化率を測定した。可溶性タンニン含量と消化率の間に弱い負の相関がみられたが,脱渋処理は乾物消化率に有意な影響を及ぼさず,今回の実験で採用した脱渋条件では,柿皮の負の影響は効果的に除去できないと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)柿皮+エビ殻飼料を摂取した採卵鶏の卵の細菌汚染度 採卵鶏に柿皮添加飼料を給与すると腸内細菌が減少するという昨年の研究結果から,柿皮添加飼料は卵殻表面の細菌汚染度を低下させることが期待されたが,今年度の結果から判断して細菌汚染度は柿皮添加によってむしろ増加する傾向にあった。このように予想に反する結果が得られたことから,研究計画の見直しが必要となっている。予想通りにならなかった原因については明らかではないものの,柿皮中の増粘物質であるペクチンが卵殻への糞の付着量を増加させた可能性がある。以上,研究目的は達成されなかったが,その原因についての示唆が得られたことから,進捗状況はやや遅れていると判断した。 2)柿皮タンニンの不溶化法に関する検討 柿皮の安全・安価な脱渋方法について検討し,エタノール処理と冷蔵処理で一定の成果を得たが,今回得られた脱渋法で処理した柿皮は,無処理柿皮におけるin vitro消化率への負の影響をわずかに軽減させたに留まった。これは不十分な成果ではあるが,研究の方向性としては概ね正しいと考えられることから,計画の見直しよりも方法の改良が必要と考えられる。また今回最も効果的な脱渋条件における可溶性タンニンの減少率は約40%であったことから,これ以下の数値にまで低下させる必要があることも判明した。以上から,進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度については退職に伴い課題を廃止予定
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度については退職に伴い課題を廃止予定
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