研究実績の概要 |
2020年度:キチナーゼ活性の高い生の柿皮(PP)でエビ殻(SM)を前処理すると,SMのキチンが部分的に分解すると期待されたが,今回の実験条件では殆ど分解されないことが判明した。一方,ギ酸処理によって消化率の向上したSMにPPを添加すると,一層向上することが明らかになり,PPの添加はSM飼料の消化率改善に寄与すると考えられた。これらの結果を参考にして,PP+SM飼料を採卵鶏に給与して産卵試験を行ったところ,SMによって生じる産卵成績,飼料効率および窒素蓄積量の低下はPP添加によって回復すること,および卵黄の抗酸化活性はSMとPPによって向上することを明らかにした。以上のように,PP添加はSMの負の栄養効果を緩和するだけでなく,卵質をも向上させることから,本研究の目的である「余剰バイオマスの適材適所的利用による新たな機能性タンパク質飼料資源の創出」は可能と考えられた(Journal of Poultry Science 58: 238-244, 2021に掲載)。 2021年度:PP中の抗栄養因子である可溶性タンニン含量を減少させる目的で,化学薬品ならびに加熱・冷却処理したところ,エタノールと冷蔵処理が有効であった。そこで,これら2つの方法で処理したPP添加飼料を用いて人工消化試験で評価したが,消化率は有意に向上せず,両処理はPP飼料化の際の前処理には不適と判断された。さらに,PP給与鶏の腸内細菌数が減少したことから,PP給与鶏が生産した卵の細菌汚染度が減少することが期待されたが,実際にはPPの飼料添加によって増える傾向にあった。これはPP給与によって糞が粘稠になり,卵殻表面への排泄物の付着量が増加したためと推察された。この点については更なる改良が必要である。 2022年度:退職に伴って課題を廃止するため,昨年度のデータの確認に留まった。
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