研究実績の概要 |
本研究では、赤色光や遠赤色光補光連続照射により起こる大麦花成促進遺伝子FT1発現制御機構を明らかにし早生化や極早生化が起こる分子メカニズムを明らかにするための研究を進める。 これまでの研究で、蛍光灯+遠赤色光補光連続照射が大麦を極早生化することを見出した。また、遠赤色光補光連続照射では花成促進遺伝子FT1発現ピークが赤色光補光より早く出現し、極早生化の原因であることが示唆された。本研究ではまず、ターゲットとして選定したイネやシロイヌナズナの花成制御に関与する遺伝子の大麦相同遺伝子(Ehd1, Ehd2, Hd3a, Hd1, COL4, Ghd7)について、赤色光補光、遠赤色光補光連続照射下で生育する栽培地(緯度)が異なる大麦6品種を人工気象器で栽培し、各遺伝子発現量の経時的変化をリアルタイムPCR法により解析したところ、全ての遺伝子の発現ピークはFT1遺伝子の発現ピークより後に出現し、FT1遺伝子の発現ピークより前に発現ピークを示す相同遺伝子は無かった。そこで、日長や春化に関与する遺伝子(VRN1, VRN2, CO1, CO2, Ppd-H1)について同様に発現ピークを解析したところ、遠赤色光補光連続照射でPpd-H1遺伝子の発現ピークがFT1遺伝子の発現ピークより約5日前に出現するが、赤色光補光連続照射ではVRN1遺伝子の発現ピークがFT1遺伝子の発現ピークより約5日前に出現することを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予測していた花成制御に関与する大麦相同遺伝子が全てFT1遺伝子の発現ピーク後に出現したため、極早生化に関与する遺伝子に相当しない事が判明した。そのためFT1遺伝子の発現ピーク前に出現する遺伝子を見出す必要があり、まずは2品種の大麦について日長や春化に関与する遺伝子(VRN1, VRN2, CO1, CO2, Ppd-H1)発現を解析し、Ppd-H1とVRN1遺伝子を候補遺伝子として得ることができた。残り4品種の大麦におけるPpd-H1とVRN1遺伝子の発現ピークを解析し、FT1遺伝子発現制御に対するPpd-H1とVRN1遺伝子の関与について確認する。
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