研究課題/領域番号 |
20K06344
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐久間 洋 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (70452688)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SSR / HRM / ゲノム解析 / GIS |
研究実績の概要 |
1.ダンチクの植生調査 2020年度はCOVID-19の感染蔓延状況を考慮して、ダンチク生息地の野外調査は断念した。すでに特定されている四国内のダンチクコロニーの航空写真を用いてMicrosoft Azure Custom Vision Service 上にダンチクコロニーの画像判定システムを構築した。2020年度は航空写真を用いた学習と、その判定結果と実際に植生との照合を行い、判定システムのブラッシュアップを行った。 2.ダンチクの分布域とGISデータの照合 航空写真を用いた特定した四国内のダンチクコロニーはGISマップ上に展開済みである。これらのデータと、気象データ、地理データ、津波データとのオーバーラップを行い、ダンチクの生息地、およびランダムに選択した調査地以内の地点(15000箇所 x 3回繰り返し)についてこれらのデータを得た。現在、これらのデータの解析を行っている。 3.遺伝子分析による遺伝的多様性の解明及び系統解析 これまでに採取済みの中四国地域に生息していたダンチクの試料を用いて、PCR-HRMを用いたSSRマーカーのジェノタイピングを試みた。14株の試料を用いて、45種類のプライマーペアを検討し、4種類のプライマーペアで多形が見られた。その結果、上記の14系統を7つのグループに分けることができた。また、更にSSRマーカーの数を増やすため、ダンチクゲノムDNAの解読を行った。 4.津波避難のランドマークとしてのダンチクコロニー情報の公開 航空写真を用いて特定した四国内のダンチクコロニーと津波浸水予測地域との照合を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はCOVID-19の感染蔓延状況を考慮して、ダンチク生息地の野外調査は断念した。 しかしながら、これまでに採取済みの中四国地域に生息していたダンチクの試料を用いて、PCR-HRMを用いたSSRマーカーのジェノタイピングを試みた。愛媛県、高知県、香川県、広島県、山口県において採取した14株の試料を用いて、Evangelistella et al., Biotechnol Biofuels 10, 2017 を参考に45種類のプライマーペアを設定した。Evangelistella et al. のSSR用プライマーペアはヨーロッパ系統のRNA seqで得られたものなので、日本系統のダンチクゲノムDNAに対して有効であるかとかくにんしたところ、33種類のプライマーペアで増幅が見られた。これらのプライマーペアを用いてPCR-HRM解析を行ったところ、4種類のプライマーペアで多形が見られた。その結果、上記の14系統を7つのグループに分けることができた。ダンチクは不稔性で遺伝的多様性が低いと思われていたが、今回解析に用いた日本に生息するダンチクにおいては、SSR-HRM解析で十分検出可能な遺伝的多様性が存在することが明らかとなった。 航空写真を用いた四国内のダンチクコロニーの特定は終了済みであり、すでに津波浸水予測地域との照合も行っている。すでに特定されている四国内のダンチクコロニーの航空写真を用いてMicrosoft Azure Custom Vision Service 上にダンチクコロニーの画像判定システムを構築した。2020年度は航空写真を用いた学習と、その判定結果と実際に植生との照合を行い、判定システムのブラッシュアップを行った。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染蔓延状況を考慮しながら、ダンチク生息地の野外調査を行う。航空写真を用いて特定したコロニーおよびAZURE Custom Vision Serviceにより予測されたコロニーについて、現地での生息状況との照合を行うとともに、ジェノタイピング用の試料を採取する。 2020年度にダンチクゲノムDNAのNGSによる解読を行ったので、このデータの解析を行い、日本におけるダンチクのゲノムの特徴を明らかにする。これまでにヨーロッパを期限とする系統のRNA seqデータはあるが、ゲノムデータは公開されておらず、また形態的、生態的特徴から原産地の一部である日本の系統とヨーロッパ系統は違いがあることが予想されている。ヨーロッパ系統と本研究で解読された日本系統のデータを比較することで、ダンチクのゲノムの特徴、および分化の過程を明らかにすることができる。これらのデータは、世界的に移入種として問題視されているダンチクの生息地コントロールにも役立つことが期待される。また、ゲノムDNAデータを用いてさらにSSRマーカーを特定し、ジェノタイピングの精度の向上を試みる。 2020年度は航空写真を用いた学習と、その判定結果と実際に植生との照合を行い、判定システムのブラッシュアップを行った。今後も、さらにブラッシュアップを進めていく。ダンチク生息地の野外調査が可能であれば、その結果を取り入れ更に精度の向上に勤める。十分な精度の画像判定システムが完成した後、四国の段築コロニーの再評価、および近畿、中国、九州地方のダンチクコロニーの予測を行い、その結果を津波浸水予測地域と照合し公開する準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延状況を鑑み、フィールド調査を控えたことから次年度使用額が生じた。令和3年度は、COVID-19の蔓延状況を考慮しながら、可能な範囲で令和2年度に行えなかったフィールド調査を行う。
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