研究課題/領域番号 |
20K06344
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐久間 洋 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (70452688)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 画像自動認識 / GIS / AZUR / HRM |
研究実績の概要 |
1.ダンチクの植生調査 2021年度はCOVID-19の感染蔓延状況を考慮して、ダンチク生息地の野外調査は断念した。Microsoft Azure Custom Vision Service 上に構築したダンチクコロニーの画像判定システムのブラッシュアップを行った。 ポジティブ、ネガティブの学習画像を準備し、学習及び評価を繰り返し、画像判定システムの信頼性向上をおこなった。また、四国外の画像や、海外の画像を用いた評価も行った。概ね、日本におけるダンチクコロニーの自動判別を足がかりとなるシステムの構築ができたと考えている。 2.ダンチクの生息地、およびランダムに選択した調査地以内の地点(15000箇所 x 3回繰り返し)気象デー タ、地理データ、津波データとのオーバーラップについのデータの解析を行い、ダンチク生存地域の特徴を明らかにした。海岸、高度、道路との距離、および津波到達フロントラインとダンチク生存域の強い関連性が明らかとなっている。 3.SSRマーカーの数を増やすため、ダンチクゲノムDNAの解読を行った。 ダンチクのゲノムはおよそ10Gbpあることが明らかとなり、その大きさにやや解析に時間がかかっているが、今後SSRマーカーの数を増やしていきたい。またSSRマーカー以外にも、前述のゲノムサイズや倍数性が明らかとなり、日本自生のグループと海外に生息するグループの比較が可能となっている。 4.津波避難のランドマークとしてのダンチクコロニー情報の公開 航空写真を用いて特定した四国内のダンチクコロニーと津波浸水予測地域との照合を完了し た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年はダンチクコロニーの自動認識システムの改善に主力を置いた。学習を繰り返したことにより、検出感度、信頼性共に大幅な向上が見られた。システムの転用性評価の指標となる日振島での結果は、適合率が0.34711、再現率が0.7を示した。各画像に占めるコロニー面積が多いと認識精度が高い傾向にあった。また、コロニーの面積が一定以上の画像について、高い割合でダンチクありと判定された。香川県、和歌山県、鹿児島県の取得地域におけるFalse positiveによる誤判定はなく、広島県でも一画像のみであった。また、冬の衛星画像である山口県の取得画像でコロニーを特定することができた。海外の衛星画像を用いた判定ではFalse positiveによる誤判定はみられないが、検出されなかったコロニーも存在した。以上の結果から、ダンチクコロニー判定システムは一定水準でのダンチク判定が可能であることが分かった。再現率が比較的高い値を示したことから、ダンチクコロニーの見落としは少ないといえる。さらに、一定以上のコロニーを含む画像について正確に判定できているため、画像サイズをさらに細かくすることでモデルの精度を高められることが示唆された。 また、ゲノム配列の解析も進めており、SSRマーカーが増えることにより、今後、各コロニー間の遺伝的関連性、多様性を明らかにすることが期待できる。また、ダンチクについてはRNAseqのデータはこれまで報告があるが、ゲノム配列のデータは報告がなく、ダンチクについての遺伝的な情報が非コード領域についても得られたことは、応用レベル、学術的にも大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はCOVID19の感染状況に配慮しながらフィールワークを行い、研究を進めていきたい。 本課題において開発したダンチクコロニー判別システムを用いて、コロニーの検出を行い、フィールドワークによりその制度の確認、及びサンプリングを行うとともに、その結果をダンチクコロニー判別システムの改善にも用いる。このシステムは世界的に移入種として問題視されているダンチクの生息地コントロールにも役立つことが期待される。 サンプリングした試料を用いてSSR-HRM解析を行い、各コロニー間の遺伝的関連性、多様性を明らかにしていく。 ゲノム配列の解析を進め、SSRマーカーの種類を増やし、SSR-HRM解析の精度を向上させていく。これまでにヨー ロッパを期限とする系統のRNA seqデータはあるが、ゲノムデータは公開されておらず、また形態的、生態的特徴から原産地の一部である日本の系統とヨーロッ パ系統は違いがあることが予想されている。ヨーロッパ系統と本研究で解読された日本系統のデータを比較することで、ダンチクのゲノムの特徴、および分化の 過程を明らかにすることができる。 完成したダンチクコロニー判別システムを用いて、四国内のダンチクコロニーの再検索、および四国外での検索を行い、できる限り多数のダンチクコロニーを特定する。さらにその結果を津波浸水予測地域と照合し公開する準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延状況を鑑み、フィールド調査を控えたことから次年度使用額が生じた。令和4年度は、感染症防止対策に考慮しつつフィールド調査を行う。
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