本研究は光触媒二酸化チタンとホウ素をドープしたダイヤモンド電極(BDD電極)を併用した生物学的汚水処理水の低環境負荷な酸化剤生成槽の構築を目的としている。昨年度までに、BDD電極に対する最適電流値を設定し、クロロホルム生成量が低く、有機分解高越の高い運転条件を見出した。さらに、運転中に発生するオゾンは、光触媒・BDD電極併用処理とBDD電極単独処理とで同程度の低濃度で検出された。また、環境汚染物質を生成する要因である有効遊離塩素の測定結果から、BDD電極単独と比較して、光触媒を併用することで有効遊離塩素の生成量が90%減少することが確認された。これらの結果より、本併用処理で有機物分解や殺菌に関与する生成物はオゾンや有効遊離塩素ではないことが示唆された。また、光触媒を併用することによって、有効遊離塩素が大幅に減少したことから、本併用処理システムは環境汚染物質を生成しにくい技術となる可能性が示された。 本年度は、併用処理後に生存している殺菌耐性細菌叢の解析とそれら細菌の分離および、殺菌耐性メカニズムの解明を行った。 殺菌耐性細菌叢解析はPMA-PCR法で行った。PMAは死細胞の細胞膜を透過してDNAと結合することでPCRを阻害するが、生細胞のDNAはPCRにより検出することができる。その結果、芽胞形成細菌以外はグラム陰性細菌が優占して検出された。 酵母エキス添加生物学的汚水処理水寒天培地と人工汚水寒天培地で純粋分離を行い、耐性細菌を3株得た。そのうちの1株は芽胞形成細菌であるBacillus subtilisであった。 殺菌耐性メカニズム解明のため、ペプチドグリカン層(PG)の厚さが異なる細胞を光触媒・BDD電極併用処理した結果、PGが厚い方が殺菌されやすかった。しかし、2時間で完全殺菌されたことから、「PGの厚さ」が耐性メカニズムに関与しているとは言い切れない結果となった。
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