研究課題/領域番号 |
20K06354
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岸本 昇 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (50280433)
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研究分担者 |
米光 裕 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (20290778) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 梅種子 / 炭 / 植物成長促進 / 農業廃棄物 / 有効利用 |
研究実績の概要 |
廃梅種子炭を植物成長促進材などに活用するにあたり、その諸物性を明らかにすることを本研究の目的とした。 廃梅種子炭を粉砕・分級し、その粒子径がNaおよびMgの水中への溶出挙動に及ぼす影響を検討した。いずれの成分も、粒子内残留量の経時変化の実測値は擬二次速度式によってほぼ良好に相関された。また、粒子径が大きいほど最大溶出量が小さくなり、擬二次速度定数が大きくなる傾向がみられた。粒子内のNa溶出挙動は時間に対して上に突な傾向を示し、K、Ca、Mgが時間に対して溶出挙動とは違う傾向となった。梅干製造工程で使用される食塩が廃梅種子中に残留していたことが原因と考えられる。 廃種子炭の植物成長促進・抑制効果を調べるために、各種条件の培地を作製した。また、滅菌したワサビ苗を作り、滅菌培地中の植物の発根を抑制する効果のあるベンジルアデニン(BA)のみ添加した培地①、梅種子炭のみ添加した培地②、BAと梅種子炭を添加した培地③、BAおよび梅種子炭とも無添加培地④について、ワサビ苗の成長観察を実施した。その結果、培地①では発根せず、培地②③④では発根が観察された。培地③については、BAが添加されていたにも関わらず、発根が観察されたのは、BAが梅種子炭に吸着されたことが主因と考えられる。一方で、梅種子炭の入った培地②については、培地④と比較して茎葉部の成長が遅れたのは、培地中の栄養成分が梅種子炭に吸着され培地中の栄養成分が減少したことが原因であると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
【課題1】 梅種子炭の調製、細孔径分布などの測定および成分分析 梅種子炭の調製条件(予熱温度、温度上昇速度、炭化温度)を変化させる予定であったが、協力農家の都合により条件を変化させた梅種子炭の調製ができなかった。新型コロナ禍の影響で実験を実施する協力学生の実験時間が不足し、全ての項目を実施できず、研究の進捗がやや遅れている。 【課題2】 梅種子炭を接触させた上澄水の成分分析 調製した梅種子炭を真水で煮沸し、梅種子炭煮沸水を調製することを予定していたが、純水中における梅種子炭からのKおよびCaの溶出挙動を原子吸光法を用いて測定する方法に変更した。梅種子炭から溶出する陽イオン性成分Mg、Naについて測定することができたが、新型コロナ禍の影響で実験を実施する協力学生の実験時間が不足し、詳細な機器分析は行えておらず、研究の進捗がやや遅れている。 【課題3】 梅種子炭を用いた食用植物の栽培試験 前年度行ったコマツナの成長観察実験に準じて、ワサビの種子を次亜塩素酸処理することにより種子を滅菌状態とし、種々条件下における種子からの発芽観察実験を行う予定であった。しかしながら、ワサビ種子を生産していた企業が種子の販売・供給をを中止したため、ワサビ種子の入手が不可能となった。他のワサビ生産企業からの入手を試みたが、ワサビ種子の入手に至らず、コマツナと同様の実験が行えなかった。そこで、滅菌処理した苗を作り出すこととし、ワサビを生産している企業に依頼し、分蘖したワサビの苗を提供してもらい、滅菌苗の育成を試みた。この操作を確立するのに手間取ったため、ワサビの成長観察実験の進捗状況に大きな遅れを生じさせる結果となった。これと並行して、協力企業に依頼し、企業内ワサビ育成設備でワサビ苗の成長観察実験を行ってもらったが、当設備が移転・廃止されることとなったため、実験の継続が不可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】 梅種子炭の調製、細孔径分布などの測定および成分分析 梅種子炭の分析(TG、XRD、SEMによる形態観察、活性炭表面に残留する無機塩量の測定)を行う。溶出の可能性がある陰イオン(Cl-など)についてもイオンクロマト法を用いて測定する。 【課題2】 梅種子炭を接触させた上澄水の成分分析 1種類の条件で調製した梅種子炭を真水で煮沸し、梅種子炭煮沸水を調製することを予定していたが、純水中における梅種子炭からのKおよびCaの溶出挙動を原子吸光法を用いて測定する方法に変更した。梅種子炭から溶出する陰イオン性成分についてもイオンクロマトなどを用いて測定する。 【課題3】 梅種子炭を用いた食用植物の栽培試験 校内研究室に於いて、棚段型水耕栽培システムを導入し、ワサビを栽培することでワサビ種子を自前で生産することにした。現在、その作業に取り組んでいる。また、継続して滅菌ワサビ苗を各種条件の梅種子炭入りの培地で培養し、ワサビの成長観察実験を実施し、梅種子炭の植物成長促進・抑制について調べることとする。また、梅種子炭が成長抑制因子を吸着する傾向がみられたことから、成長抑制物質の除去能に注目し、梅種子炭における成長抑制物質の吸着平衡関係を測定し、分離工学的観点から検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に、種々の調製条件で梅種子を原料とする梅種子炭を調製する予定であったが、協力農家が運用している調製装置が不調で、梅種子炭を調製できなかった。そのため、調製条件を変えて梅種子炭を調製することができず、新たな梅種子炭を調達できなかったため、物品費、人件費が発生せず、未使用額が生じた。 新型コロナ禍の影響で研究時間が十分確保できす、また、研究に必要なワサビの種子を入手できなかったことから、予定の実験を行うことができず、発生する予定であった物品の購入をしなった。得られた研究成果を学会で発表する予定であったが、新型コロナ禍の影響で実大会がオンライン大会に変更となったため、旅費が発生しなかった。 (次年度における未使用額の使途内容) 昨年度実施できなかった実験項目を次年度に実施することになるため、未使用額はその物品購入経費に充てることにしたい。旅費の未使用額については、次年度に研究成果を積み増し、実学会での発表を行うことを目標としたいため、その経費に充てることとしたい。
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