研究課題/領域番号 |
20K06359
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐藤 祐介 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (50589520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 分化 / エネルギー代謝 / ミトコンドリアの呼吸 / Apobec2 |
研究実績の概要 |
骨格筋は単核の筋芽細胞が分化・融合した多核の筋線維の集合体であり、生体最大のエネルギー代謝器官である。研究代表者のこれまでの研究から、脱アミノ化酵素Apobec2が筋細胞の「分化」および「エネルギー代謝」の両方を制御する可能性を見出した。初年度の計画に基づき、まずApobec2が筋細胞のステージごとに異なる機能を有する可能性について検証した。 Apobec2は筋細胞の分化に伴い、その発現量が増加する。一方で、Apobec2欠損マウスから単離した筋芽細胞(Apobec2-/-)では、初期の筋分化が促進されることがわかっている。Apobec2と筋分化の関係の詳細を調べるため、C2C12筋芽細胞に対しApobec2発現プラスミドを導入した。細胞の形態観察およびqRT-PCRによるマーカー遺伝子の発現量の定量から、Apobec2の強制発現は筋芽細胞から筋管への分化を顕著に抑制することがわかった。Apobec2は筋分化時のDNA脱メチル化を制御すると考えられているため、メチル化特異的PCR にて筋分化を制御するMyog, Myod1, Myf5遺伝子のメチル化レベルを調べたが、Apobec2の強制発現による影響は確認されなかった。 次に、Apobec2とエネルギー代謝の関係を調べるため、siRNAを用いたApobec2ノックダウンと細胞外フラックスアナライザーを用いたミトストレス試験を実施した。siRNAの導入により、筋細胞におけるApobec2発現量はタンパク質レベルで約50%減少したが、ミトコンドリア呼吸鎖複合体のタンパク質発現量に変化は見られなかった。ミトストレス試験の結果、コントロールと比べてAopbec2をノックダウンした筋細胞では、ミトコンドリアの呼吸が亢進していた。以上から、Apobec2が筋細胞において分化とエネルギー代謝の両方を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で研究活動が大幅に制限される中、準備研究で作製したプラスミドを用いることで、おおむね初年度の研究計画を遂行できた。初年度の研究から、Apobec2が筋細胞の分化とエネルギー代謝の両方を制御するエビデンスを得るた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、Apobec2欠損がマウス生体においてエネルギー代謝を亢進する可能性を見出している。一方で、Apobec2欠損がどの組織においてエネルギー代謝を亢進するのか、その詳細は不明である。そこで次年度は、アデノ随伴ウイルスを用いてApobec2をマウス骨格筋において強制発現させることで、生体レベルでエネルギー代謝との関係を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため参加予定であった複数の対面式学会が開催されず、計上していた旅費を使用しなかった。また、緊急事態宣言等により研究活動に制限があったため、当初計画ほど消耗品を使用しなかった。次年度使用額については、初年度の研究結果の再現性の確認および学会での成果発表で使用する予定である。
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