研究課題/領域番号 |
20K06362
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
濱野 光市 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70303443)
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研究分担者 |
高木 優二 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20226757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精子 / 走温性 / ウシ / カルシウム / 受胎率 |
研究実績の概要 |
本研究では、走温性を利用した精子の検査法や雄ウシの繁殖能力評価法を畜産現場に応用・展開するため、1.走温性の発現および運動調節機構の解明、 2.走温性発現経路、伝達機構の解明、 3.走温性発現精子の受精機能の解明を進める。 2021年度は以下のことを明らかにした。 2.走温性発現経路、伝達機構の解明( 1 )走温性発現精子のカルシウム動態の解析-②:走温性発現精子の時間経過および温度勾配によるカルシウムの分布と濃度の変化を調べた。 ・異なる温度勾配において時間経過による精子のカルシウムの分布と濃度の変化を調べた。36℃の温度一定(一定)区と36℃から38℃への温度勾配(勾配)区における精子のカルシウムイオン濃度(Ca)を比較した。勾配区では5秒後にCaが上昇し、10、20、30秒後においても、一定区と比べ有意に高かった。5、10、20、30秒後において勾配区の精子のCaは0秒と比べ有意に高かった。37℃の一定区と37℃から38℃への勾配区における精子のCaを比較した。37℃から38℃への勾配区では5秒後の精子のCaが上昇し、一定区と比べ有意に高い濃度であったが、20、30、35秒では有意な差はなかった。5、10秒後において勾配区の精子のCaは0秒と比べ、有意に高かった。36℃から38℃への勾配区における精子のCaは、37℃から38℃への勾配区より濃度増加は大きく、持続する傾向にあった。 ・36℃の一定区と36℃から38℃への勾配区における集団の精子のCaを相対輝度として評価した。一定区および勾配区の低温、高温域を移動する集団の精子の相対輝度は差がなかった。勾配区と一定区の分岐部、勾配区の高温域と温度一定区の精子のCaの相対輝度は差がみられた。勾配区と一定区では個別精子のCaの変化は差がなかった。勾配区の精子のCaは一定区と比べ変動が増大した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低温域から高温域に移動する精子を確認し、ウシ精子における走温性の発現を明らかにした。・39~40℃の温度勾配では高温域への精子の移動が抑制されることを確認した。・温度勾配の低温域の精子が軌跡速度を低下しながら、高温域方向に移動することを明らかにした。・温度勾配の低温域における精子の鞭毛角度が増大することを確認した。・温度一定区と温度勾配区における精子内カルシウムイオンレベルが異なることを明らかにした。 温度勾配区では温度一定区と比べ、カルシウムイオンレベルが高いことを明らかにした。・温度勾配区の精子のカルシウムイオン濃度は時間経過にともない有意に高いことを確認した。・温度勾配区の精子のカルシウムイオン濃度の変動が増大することを明らかにした。 走温性発現調節部位の解明がやや遅れている。・走温性発現精子におけるカルシウム作用機構の解明がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.走温性発現および運動調節機構の解明 ( 2 )走温性発現部位の解析:TritonX-100により除膜した精子の温度勾配における尾部の変化を解析し、精子の走温性発現調節部位を同定する。 2.走温性発現経路、伝達機構の解明( 2 )走温性発現精子におけるカルシウム作用機構の解明:TRPC、細胞内放出チャネル阻害剤: SKF、ライアノジンを添加し、精子の走温性を調べることでカルシウムシグナル伝達機構を明らかにする。 3.走温性発現精子の受精機能の解明 ( 1 )走温性発現精子の超活性化運動の解析:超活性化運動誘起精子を粘性培地内の温度勾配に導入し、頭部の遊泳軌跡、チャンバー内を移動する精子の数と方向の変化の解析から、運動調節機構を解明する。( 2 )走温性発現精子の受精能の解析:走温性発現精子の染色性から受精能獲得を、ウシ卵子との体外受精から受精率を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:独自の事前研究機器、試薬、消耗品により研究ができたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度使用額は2022年度請求額と合わせて、ガラス器具、プラスチック製品、酵素、蛍光試薬、凍結ウシ精液、液体窒素を購入し、利用する。
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