本研究では、精子の走温性における運動調節とカルシウムシグナル伝達機構を調べることにより、①走温性発現精子の運動調節機構が解明できる。②走温性を指標にした精子の受精能、雄ウシの繁殖能力が評価できる。③繁殖能力の高い雄ウシが選抜され、効率的にウシを増産できる。 2020~2022年度、本研究は以下のことを明らかにした。温度勾配(勾配)区の低温域から高温域に移動する精子を確認し、ウシ精子における走温性の発現を明らかにした。走温性発現精子の運動性を解析し、低温域において鞭毛角度を増大し、軌跡速度を低下しながら高温域に移動することを明らかにした。勾配区の精子のカルシウムイオン濃度(Ca)は、5秒後に上昇し、10、20、30秒後では温度一定(一定)区と比べ有意に高かった。勾配区の精子の5、10、20、30秒後のCaは0秒と比べ有意に高かった。勾配区のTRPV3チャネル促進、TRPV4チャネル促進処理精子の高温域への移動能、VAP、尾部屈曲率は、低温域より有意に高かった。高温域のTRPV3チャネル促進処理精子のVCL、尾部打頻度は有意に高く、LINは有意に低かった。走温性発現精子の運動性の変化におけるTRPVチャネルの関与が示唆された。勾配区の超活性化運動精子は粘性培地において高温域への移動能が高く、走温性の発現が確認され、粘性培地に適応し運動性を変化する可能性が示唆された。 2023年度、本研究は以下のことを明らかにした。除膜精子は接着割合が高く、一定区、勾配区における運動性検査が困難なことから、走温性発現部位を解析できなかった。勾配区のCTC染色走温性発現精子の受精能獲得率は、高温域において高い傾向にあった。勾配区から回収後の精子は、運動性が低く体外受精に供試できなかった。ヤギ精子における走温性の発現を明らかにした。
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