現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
人類未曾有の新型コロナ感染症拡大の影響下でほとんど学会発表の機会を与えられなかったこと (学会発表件数1件のみ) は研究成果を積んだ学生の教育的視点から見るとよかったとは言えないが、代わりに論文執筆に多くの時間を割くことができた。その結果、ウシ卵子とラット膵島の両輪を研究対象として走らせている本研究課題において、膵島テーマだけで目標 (年1編の論文公表) を大きく上回る3編の研究論文を公表することに成功した。1編目は「糖尿病モデルラット1匹への最低必要膵島移植数550個をシルクフィブロイン製デバイス1枚に搭載してガラス化・加温した後、そのデバイスに新生血管誘導のアシストが期待されるVEGFを補填し、膵島を回収することなくそのデバイスごと腎被膜下に移植した。その結果、VEGFを補填した場合にのみ、3割以上のレシピエントラットが正常血糖値に回復した (Yamanaka et al., 2021)」というものである。2・3編目はin vitroの評価系だけでまとめたもので、それぞれ「高静水圧処理により脱細胞化したラット肝臓を膵島微小環境修復用の細胞外マトリクスとして新鮮単離膵島または加温膵島の培養液に添加したところ、インスリン分泌能が有意に改善された (Nakayama-Iwatsuki et al., 2021)」、「ガラス化・加温膵島由来の偽膵島は新鮮膵島と同等の生存性・機能性を持ち、グルカゴン分泌α細胞とインスリン分泌β細胞が新鮮膵島のように再配置されていた (Nakayama-Iwatsuki et al., 2021)」というものである。その他、ASJ誌から執筆依頼を受けて、ウシ未受精卵子のガラス化デバイスに関する総説記事1編を著した (Hochi, 2022)。
よって、「当初の計画以上に進展している」と言える。
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